バイオプラスチックの最新技術動向 ―真の普及を目指して―

2022年7月29日
シーエムシー出版

木村俊範

バイオプラスチックの最新技術動向 ―真の普及を目指して―の写真

★2021年6月のプラスチックに関わる資源循環の促進等に関する法律(通称促進法)成立など、プラスチックへの規制が強まることで再度脚光を浴びるバイオプラスチック! ★非可食バイオマス、海洋分解性プラスチックなど注目を浴びるなか、各社の取り組み状況は? ★耐熱性・透明性など製品応用に向けて課題となる機能性を如何にして解決するか!?

著者情報

北海道大学名誉教授
木村俊範氏

本書のコンセプトと構成/目次等

  1. 【基礎編】
  2. 第1章 バイオマスプラスチックの基礎と普及に向けた課題と展望
    第2章 生分解性プラスチックの基礎と技術動向
    第3章 海洋プラスチック汚染問題─科学的事実と持続可能性─
    第4章 プラスチックの生分解性に関する評価と規格

  3. 【材料技術編】
  4. 第5章 多糖類を原料とした新規バイオマスプラスチック
    第6章 ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
    第7章 カネカ生分解性ポリマーGreen Planet®の海水中における生分解性と社会実装
    第8章 デンプンをベースとする高分子材料
    第9章 ポリ乳酸
    第10章 ポリ乳酸系ブレンド
    第11章 セルロースナノファイバーによるバイオポリエチレンの性能強化
    第12章 植物由来ポリエチレン
    第13章 バイオPET
    第14章 バイオイソシアネート利用ポリウレタン
    第15章 バイオベースエポキシ樹脂
    第16章 バイオマス由来フェノール樹脂の生産技術
    第17章 高耐熱性・透明性を有する芳香族バイオプラスチック
    第18章 バイオプラスチックとしての酢酸セルロースの展開
    第19章 藻類系バイオプラスチック
    第20章 バイオポリアミド
    第21章 フラン誘導体を用いたバイオプラスチック
    第22章 ナノキチンの製造技術とその繊維補強材料

著者インタビュー

 これまでにバイオマス利活用に係る大きなうねりは2回ほどあり、まず、1970年代のオイルショックに端を発するものが第1波、 1992年の「地球サミット」(開催地ブラジル)を契機に世界的な関心事となった地球温暖化問題に誘導されたものが第2波である。
 そして今般の第3波である。第1章にて触れるが、これまでの2つの波が目指した目標は未解決であり、地球温暖化に伴う異常気象の発生も無視できない状況である。加えて、生物多様性や人類の幸福までも含めた持続性の高い要求(SDGs等)が世界的に重要視されるようになり、バイオマスの利活用もこの新しい枠組み内での展開が必須と言えよう。
 最近までの我が国の対応に目を転ずると、世界の動きからかなり遅れている。バイオマス由来のプラスチック製品についても同様であり、2002年のバイオマスニッポン総合戦略、バイオテクノロジー戦略大綱、2005年の愛・地球博以後は関心が薄れ、今や製品製造の空洞化にも陥ってしまっている。
 しかし、漸く我が国政府も重い腰を上げ、2016年にプラスチック資源循環戦略、地球温暖化対策計画においてバイオマスプラスチックの導入と温室効果ガス(GHG)削減目標が数値化(2030年までの導入量197万トン、削減量207万トン)された。バイオマスプラスチックの普及拡大を唱えつつも2002年の2つの戦略では数値目標が明確に示されずに終わったが、この度数値目標を示したことでその達成に向けた関連施策がかなり具体的に検討され、2021年1月バイオプラスチック導入ロードマップの発出、同年6月のプラスチックに関わる資源循環の促進等に関する法律(通称促進法)成立、そして促進法の肉付けと関連法規制の改正等が盛り込まれて4月1日に正式施行されたのは大きな進歩と言える。
 今般の情勢に呼応してバイオマスやプラスチックに関する専門書や啓蒙書が種々出版されているが、第1波、第2波、そして今日に至るまで継続的に取り組んできた経験者としてバイオプラスチックの来し方行く末を俯瞰し、目標達成のための課題と展望を披露することを、本書の特徴の一つとしたいと思う。
 各論において貴重な玉稿を提供された執筆者各位に感謝すると共に、本書が読者の皆様のご期待に多少なりとも沿えられることを願うものである。(本書「はじめに」より抜粋)