アンモニアを用いた水素エネルギーシステム《普及版》

2022年2月7日
シーエムシー出版

小島由継

アンモニアを用いた水素エネルギーシステム《普及版》の写真

2015年刊「アンモニアを用いた水素エネルギーシステム」の普及版。水素含有量率、水素密度が高く、分解時には水素、窒素、水のみが発生するカーボンフリーなアンモニアのエネルギー利用と水素キャリアとして燃料電池への応用から直接燃焼までを紹介している。

著者情報

広島大学先進機能物質研究センター 教授
小島由継氏

本書のコンセプトと構成/目次等

  1. 総論 水素エネルギーキャリアとしてのアンモニア
  2. 〔第1編 水素・アンモニア製造〕
  3. 第1章 熱化学法ISプロセスによる水からの水素製造
    第2章 低温熱化学水素製造
    第3章 高温熱化学水素製造
    第4章 水蒸気電解
    第5章 ハーバーボッシュ法とルテニウムを触媒とするアンモニア合成
    第6章 水素化物ナノ粒子を用いたアンモニアの合成
    第7章 高活性なアンモニア合成触媒
    第8章 常温常圧でのアンモニアの合成
    第9章 可視光を用いた空気中の窒素からの人工光合成によるアンモニア合成
    第10章 水と窒素からの常圧アンモニア電解合成
    第11章 有機廃棄物を原料としたアンモニア製造の可能性

  4. 〔第2編 アンモニア貯蔵・輸送〕
  5. 第1章 液体アンモニアを媒体とする水素貯蔵・輸送
    第2章 アンモニア吸蔵材料を用いた安全なコンパクトタンク
    第3章 Investigating and Understanding Solid-State Ionic Ammine Materials

  6. 〔第3編 アンモニア利用〕
  7. 第1章 家畜排泄物からのアンモニア生産と燃料電池への応用
    第2章 ルテニウム(Ru)系分解触媒
    第3章 直接利用技術(燃料電池)
    第4章 直接燃焼・ガスタービン
    第5章 直接アンモニア形水素膜燃料電池の可能性
    第6章 アンモニアを利用したエンジンシステム
    第7章 Recent progress on the Ammonia-Gasoline and the Ammonia-Diesel Dual Fueled Internal Combustion Engines in Korea 

著者インタビュー

 < CO2フリーの水素社会を目指して >
 人類は、地球規模で、エネルギー問題(化石燃料の枯渇)と環境問題(エネルギー消費による環境汚染)に直面している。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2014年11月2日、地球温暖化の悪影響を避けるために、今世紀末には温室ガスの排出量をほぼゼロにする必要がある報告書を発表している。報告書によると人類に許される二酸化炭素排出量は残り一兆トンである。国際エネルギー機関(IEA)によると、年間317億トン(2012年)の二酸化炭素が排出されており、約30年で限界に達する。原子力発電は二酸化炭素を削減するための切り札として考えられてきた。ところが、2011年3月11日に発生した東日本大震災にともなう原子力発電所の事故により、現在(2015年2月)、その割合は30%(2010年)からゼロとなっている。一方、再生可能エネルギー(太陽熱・光 、風力、地熱、水力、バイオマス等)は、エネルギー密度が低い上に自然を相手にするため、時間的な変動が大きく扱いにくいといった課題を有しているものの、次世代クリーンエネルギーとして注目されている。これまで、再生可能エネルギーを大量に貯蔵し輸送するために水素が考えられてきた。しかし水素は常温、常圧では気体であり、液化するためには極低温あるいは数10MPa以上の高圧を要する。従って、水素を安全かつ多量に貯蔵・輸送することは困難である。
 これに対して、水素を貯蔵・輸送が容易なアンモニア(NH3)に変換し、水素エネルギーキャリアをアンモニアに代える水素社会が考えられる。エネルギー基本計画2014や水素・燃料電池戦略ロードマップ(経済産業省)にアンモニアが盛り込まれることによって、水素エネルギーキャリアとしてのアンモニアに注目が集まってきている。
 本書では再生可能エネルギーからの水素・アンモニア製造、アンモニア貯蔵・輸送、アンモニア利用技術の現状について説明した。現在、国内では石油換算5億トン/年でエネルギーが使用されている。アンモニアのエネルギー量は単位重量当たり石油の約50%であり、アンモニアを国内で消費するエネルギーとして利用する場合、CO2フリーのアンモニアが10億トン/年必要である。アンモニア製造、貯蔵・輸送、利用技術の開発が進み、22世紀には化石燃料に依存しないアンモニアを用いた水素社会の到来が望まれる。
 最後に、ご多忙の中をご執筆いただいた皆様方および本書刊行のためにご尽力いただいたシーエムシー出版の門脇孝子氏に感謝申しあげます。

2015年3月
広島大学 先進機能物質研究センター長    小島由継

 本書は2015年に『アンモニアを用いた水素エネルギーシステム』として刊行されました。普及版の刊行にあたり、内容は当時のままであり、加筆・訂正などの手は加えておりませんので、ご了承ください。