ウチの会社 電気売るんだってよ 電力小売ビジネスを始めるための10のポイント|PPS-NET

ウチの会社 電気売るんだってよ 電力小売ビジネスを始めるための10のポイント

発行年月日:2016年1月21日
発行所:一般社団法人日本電気協会新聞部

著者:武川克哉、石橋和幸

ウチの会社 電気売るんだってよ 電力小売ビジネスを始めるための10のポイントの写真

電力の基幹システムを手掛ける関電システムソリューションズが、その知見と経験を生かし、電力小売りビジネス立ち上げのノウハウを記した解説本です。 本書は、電気事業の歴史や電力システム改革の全貌をまとめた[基礎編]、小売り事業開始に必要となる業務の全体像を示す[準備編]、各業務を詳細に解説する[実践編]で構成されています。

著者インタビュー

著者情報

武川克哉の顔写真

関電システムソリューションズ株式会社
経営戦略本部ビジネスコンサルティング部部長

武川克哉氏

生命保険会社、システムインテグレーター、外資系コンサルティングファームを経て、現職。これまで、電力会社、ガス会社、鉄道会社など、社会インフラ企業向けサービスを多数手掛けており、豊富なプロジェクト・マネジメント経験を有している。現在は、新電力向けビジネスを立ち上げ、事業計画・業務プロセス設計の支援から「NISHIKI」導入まで、小売電気事業者向けサービスに幅広く従事している。

石橋和幸の顔写真

関電システムソリューションズ株式会社
経営戦略本部ビジネスコンサルティング部マネージングコンサルタント・中小企業診断士

石橋和幸氏

ベンチャー企業、システムインテグレーターを経て、現職。専門は電力自由化、新規事業開発、M&A、事業投資評価など。これまで新規事業開発プロジェクトを多数手掛けてきており、PPS立ち上げ企画も経験。現在は、電力小売りに参入する数多くの事業者に対して、事業立ち上げのコンサルティングサービスを提供している。確かな情報収集力に基づく戦略の提案、実践的な業務プロセスの設計を強みとしている。

Q. 本書を書かれたきっかけは?

我々は関西電力の子会社として、電力小売はもちろん発電・送配電事業においてもITの導入を通して関電を支援してきました。従って、電気事業全体を見渡し、新電力が参入する際の注意点や何がビジネスの肝になるかを分かる立ち位置にいると言えます。

そうしたノウハウ・知見を活かして、ビジネスそのものの立ち上げから支援するコンサルティングサービスを約二年前から提供してきました。実際のコンサルティングの現場では、今まで電力会社内に閉じられていて、外からはうかがい知れない部分を内包するビジネスに新電力は取り組まねばならず、しかも現在進行形の制度設計もキャッチアップしていかなければなりません。多くの新規参入者が大変苦労していることを我々は肌で感じました。

以前から制度や海外の電力自由化について書かれた本はありましたが、実際のビジネスとオペレーションに着目したものは中々ありません。我々のお客様のみならず、広く世の中に我々のノウハウ・知見を提供することは、電力自由化の一助になり、ひいては我々のビジネスにも返ってくると考えて書籍出版を企画しました。

Q. 本書の魅力や特に訴えたい部分は何ですか?

電気・電力関係の本は、外見も内容も堅いものが多いように思います。本だけでなく、例えば公的機関における資料等も、書き方が四角くて、なおかつ結論がないような読みにくいものが目立ちます。そのため、印象をやわらかくして、まず手に取ってみたくなるようにしたいと考えました。

本書の執筆にあたっては、新電力が今まさに経験していることをそのまま書き下ろすことを心がけました。実際に電力小売事業を推進していくには、電源調達から販売、料金計算、需給管理など専門性が求められる業務を行わなければなりません。実務担当者が専門性を高めるための入り口となり、かつその周囲においてどのようにビジネスが動いているのか、経営の流れを理解してもらう狙いも込めて、新電力としてやるべき業務を網羅した章立てを考えました。

そのような真面目な内容を読みやすく、わかりやすく記述する一方で、本書のタイトルや表紙デザインは、親しみやすいイメージを意識して作りました。また、弊社や関電グループの宣伝本のような論調にしてしまうと読者は興ざめしてしまうので、中立な立場を貫いて内容そのものに価値を感じてもらおうと包み隠さず全てを書いています。異業種から電力小売事業に参入する企業の実務担当者を主な読者に想定していますが、電力自由化の舞台裏を垣間見るということで、一般の読者にも十分に読み応えのある本になっているのではないでしょうか。

Q. 電力小売りの全面自由化から半年が経過しましたが、現状の制度や業務上の課題、今後に期待することは何ですか?

自由化から半年が経過し、スイッチング件数は200万件を超えました。巷のニュースではまだたった3%だとか、期待外れの自由化といった論調が目立ちますが、電力会社の自由料金メニューを含めると6%を超えています。

我々はこれを一定の評価ができる数字だと捉えています。海外では自由化から10年経過しても年間のスイッチング率が10%に満たない国も少なくありません。最初の半年で6%というのは、十分健闘していると言えるのではないでしょうか。

それでは、何がスイッチングの決め手になっているのかと言うと、家庭に届く電気に変わりはなく電気料金も大きな違いはないので、それは差別化要因にはなっていません。現状は、企業のブランド力や、提案型の営業を行えている企業が優位に立っていると言えるでしょう。全国的な知名度がなくても、地域に密着したLPガス販売事業者が顧客訪問時に電気の切り替えを勧めるなど、能動的なface to faceのアプローチが功を奏しています。

そのようなアプローチで成功しているのがガス会社ですが、しばらくはこの状況が続くのではないでしょうか。しかし、いずれは商品そのもので差別化を図ることが求められる局面が訪れるでしょう。例えば、今後スマートメーターが普及して、顧客が30分毎の詳細な電気の使用量を把握できるようになってくると、負荷移行を促して電気料金を抑制するプランが一つのキラーソリューションになってくると思います。

また、WEBでの顧客獲得も大いに取り組むべき課題です。現状ではWEBでの申し込みはマイノリティですが、物理的な商品のやり取りのない電気は、本来WEBでの販売に最も適していると言えます。

業務オペレーションやシステムの改善といった点では、新電力側と送配電側の双方による努力が必要です。特に送配電側では電気使用量の通知遅延などで、多大な負担を新電力に強いました。速やかな問題解決は当然のことですが、実際問題としてイレギュラーなケースも少なからず見受けられます。新電力側も公益事業に参入したという覚悟を持って、柔軟な対応を取れる体制を整えていく必要があるでしょう。アメリカでは20州程度が自由化されていますが、日々改善や制度変更により送配電側のシステム変更が行われており、小売事業者は迅速なキャッチアップが求められています。

そうした中でガスの自由化が始まります。電力自由化のときも目まぐるしく状況が変化していましたが、それでも8月時点でスイッチング支援システムの仕様は公開されていました。ガスの場合は広域機関もなく、大手3社を始め各ガス会社からは11月の時点でもまだスイッチング手続きの業務やシステムに関する情報は公開されていません。実際問題として、ガス小売事業者となる企業は電力会社など一部に限られることになりそうですが、販売代理店などの形態で参入する場合であっても事業の立ち上げには苦労が続きそうです。

電気もガスも、電力・ガス取引等監視委員会などで継続して議論が重ねられ、制度や枠組みが次々と変わってきています。また、様々な周辺ビジネスも生まれようとしているので、新しい情報を迅速に入手するとともに既存の枠にとらわれないリレーション作りが重要になってくると考えています。