大気汚染と皮膚への影響

2017年08月31日

所属:國學院大學

インターン生:I.Yさん

大気汚染と皮膚への影響の写真

私は都市部出身ですが、肌が弱く長年肌荒れや湿疹に悩まされています。しかし、現在の大学に入る前、比較的空気のきれいな山間部の学校に在籍していた2年間のみ、湿疹ができにくく肌の調子が良好でした。 かねてより大気汚染の人体への影響に関しては言及されていますが、上記の経験から、大気汚染は皮膚にも影響を及ぼすのではないかと考えました。そこで今回、大気汚染と皮膚トラブルについて、その関係を探っていきたいと思います。

大気汚染の原因

そもそも大気汚染は、私達が社会活動を行うことに伴って引き起こされます。その主な原因に、工場などの生産活動や自動車の使用による大気汚染物質の排出が挙げられます。発生する形状は、ガスや粒子など様々です。

主な大気汚染物質と健康被害

硫黄酸化物(Sox)

二酸化硫黄(SO2)などの硫黄酸化物は、石油や石炭などの化石燃料が燃える際に発生します。日本では高度経済成長の時代に、工場からの煙などに含まれる硫黄酸化物による大気汚染が進行し、大きな問題になりました。気管支炎やぜん息の原因になるなど、人体に悪影響を及ぼしたり、また、酸性雨の原因にもなります。さまざまな対策や規制の結果、その濃度は現在、減少しています。

窒素酸化物(NOx)

二酸化窒素(NO2)などの窒素酸化物は、燃料を高温で燃やすことで、燃料中や空気中の窒素と酸素が結びついて発生します。高濃度の二酸化窒素は、のど、気管、肺などの呼吸器に悪影響を与えます。工場や火力発電所、自動車、家庭など発生源は多様です。都市部の自動車から排出される窒素酸化物による大気汚染が問題となり、現在も排出ガス規制などにより排出量を減らす努力が続けられています。

光化学オキシダント(Ox)

光化学オキシダントは、自動車や工場などから排出された窒素酸化物や揮発性有機化合物(VOC。塗料やインク、接着剤などに溶剤として含まれており、揮発しやすく大気中で気体になる)が、紫外線を受けて光化学反応を起こすことで生じる物質です。高濃度の光化学オキシダントが大気中に漂う現象を光化学スモッグといい、目の痛みや吐き気、頭痛などの健康被害を引き起こします。近年では、海外からの影響も指摘され、注目されています。

粒子状物質(PM)

粒子状物質は固体および液体の粒を指します。工場などの煙から出るばいじんや、鉱物の堆積場などから発生する粉じん、ディーゼル車の排出ガスに含まれる黒煙などのほか、土ぼこりなど自然現象によるものもあります。高度経済成長期には、洗濯物や室内の汚れなど生活環境への被害が発生しました。また、人体に与える影響も強く、高濃度の粒子状物質は呼吸器疾患やガンなどと関連があると考えられています。

浮遊粒子状物質(SPM)

粒子状物質のうち、粒径10マイクロメートル以下の小さなものが浮遊粒子状物質と呼ばれます(ちなみに、人間の毛穴の直径は200~400マイクロメートル)。粒径がより小さく吸い込むと肺や気管などに沈着しやすいため、呼吸器に悪影響を与えるだけでなく、ガンや花粉症などのアレルギー疾患との関連が指摘されています。都市部の自動車交通量の急増に伴い、浮遊粒子状物質による大気汚染が深刻化したため、さまざまな規制が実施されています。

微小粒子状物質(PM2.5)

浮遊粒子状物質のうちで、さらに小さい粒径2.5マイクロメートル以下のものを微小粒子状物質と呼び、PM2.5の通称で知られています。浮遊粒子状物質よりさらに気管支や肺の奥深くまで入りやすいため、呼吸器疾患だけでなく、肺ガンなどを引き起こす可能性があると言われています。中国やイギリスの研究チームにより、PM2.5による死亡者数は世界で年に約345万人との推計結果が出ており、問題になっています。日本では2009(平成21)年に環境基準が設けられ、対策が急がれています。

皮膚への影響

上記のように、大気汚染物質は呼吸器系や循環器系への影響が懸念されていますが、最近は皮膚にも影響を及ぼすと言われています。環境保健学の内山巌雄京都大学名誉教授は、大気汚染物質の粒子の中に水や油に溶けやすい成分のものがあることから、大気汚染物質が皮膚から出た汗や皮脂に溶け込んだり付着したりする可能性を指摘しています。

皮膚科医でしらゆり皮フ科・整形外科(横浜市)の池田麻純院長によると、アトピー患者や「敏感肌」の人は大気汚染のダメージを受けやすく、健康な肌の人も、大気汚染物質にさらされ続けると、皮膚内部の活性酸素が過剰に発生して細胞やDNAにダメージを与え、シミやシワができやすくなるといいます。

バリア機能(角質層)が低下した敏感肌は、紫外線など外部刺激に弱く、大気汚染によるダメージも受けやすい状態になっています。加えてそれらの外部刺激によって、活性酸素が皮膚内部に発生しやすい状態になります。活性酸素は酸化力が強力な酸素のことで、本来は外部刺激から体細胞を守る機能を持っています。

ところが活性酸素が過剰発生すると、その防衛力も強すぎてしまうため、活性酸素の作用で皮膚の細胞が酸化を引き起こし、細胞やDNA を傷つけてしまいます。そのため、皮膚が大気汚染にさらされ続けると、皮膚を守るために活性酸素が過剰発生して酸化による皮膚ダメージが起こりやすくなります。

活性酸素は細胞膜に含まれる不飽和脂肪酸と結びついて酸化させ、過酸化脂質という有害な物質を作りだします。過酸化脂質は細胞内部に浸透する性質があり、体内にとどまる時間も長いため体に害を与えやすく、細胞や組織を破壊したり、老化色素であるリポフスチンを作り、細胞の動きを止めてしまうと言われています。

結果として、メラニン色素を誘発させてシミの原因となったり、皮脂の酸化による刺激でニキビの炎症を招いて悪化させたり、真皮層にあるコラーゲンやエラスチンを破壊し、シワ、たるみ、皮膚の老化を促進するということです。

東北大学の研究

東北大学大学院医学系研究科の山本雅之教授らは、大気汚染物質がアトピー性皮膚炎の諸症状を引き起こす仕組みの一端を解明したと発表しました。これまで、大気汚染とアトピー性皮膚炎の患者数や重症度に相関があることが知られていましたが、その理由は不明でした。

研究グループは、有毒物質のダイオキシンと結合するタンパク質「AhR」が皮膚の表面で活性化することにより神経を成長させるタンパク質「アルテミン(artemin)」が増え、皮膚表面の表皮内へ神経が伸長し、過剰に痒みを感じやすい状態が作り出されることを突き止めました。過剰な痒みにより皮膚を掻いてしまうことで皮膚バリアが破壊され、皮膚から多くの抗原が侵入してアレルギー性皮膚炎を引き起こすと考えられています。

出典:東北大学

海外の研究

海外の研究では、空気が汚染されている地域の人はそうでない地域の人より皮膚の老化傾向がみられたという結果が出ています。ドイツの70~80歳の女性400人を対象にした調査では、1日当たり1万台超の車が通る道路から100メートル以内の地域のような大気汚染レベルの高い地域にすむグループは、そうでないグループと比べ、シミ(色素沈着)が額では35%、頬では15%多くできたという報告があります。

私たちが心がけるべきこと

大気汚染物質から皮膚を守るため、毎日のスキンケアは必要だと考えます。また、活性酸素を抑えるため、食品の中に含まれるビタミンC やビタミンE などの抗酸化物質を摂取したり、タバコやアルコールを控える、運動する、ストレスをためないなどということを心がけることが重要であるという意見もあります。

さらに、原因である大気汚染を深刻化させないために、家庭内での省エネによって電力発電時や使用時の大気汚染物質の排出を減らしたり、公共交通機関を積極的に利用することで大気汚染の大きな原因である自動車の交通量を減らしたり、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の発生原因である揮発性有機化合物(VOC)を輩出しないためにペンキやフェルトペン、スプレーなどの使用の際はVOC含有量の少ないものを選ぶなど、一人一人が環境を意識し行動することが大切です。