ホルムズ海峡が夏まで封鎖された日本企業のコストと電力に何が起きるかー 後編:電力・ガス料金の時間差波及と業種別影響ー
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前編では、ホルムズ海峡の通航制約が原油・LNG価格の上昇から始まり、物流コスト、原材料費、そして企業収益を圧迫するマージンスクイーズへとつながる流れを整理しました。 ただし、封鎖の影響はすべてが同時に来るわけではありません。まず市場価格と物流コストが動き、数か月後に電力・ガス料金の請求書へと波及していきます。後編では、この「時間差」を軸に、電力・ガス料金への影響と、業種ごとに異なるコスト圧力を整理します。
電力・ガス料金への影響は、「請求書」に時間差で現れる
封鎖の影響は、原油価格のニュースよりも遅れて、企業の請求額に反映されます。この時間差を理解しておくことが、実務的な対応の出発点になります。
燃料費調整制度が時間差を生む
日本の電力料金には「燃料費調整制度」があります。火力発電に使う燃料(LNG・石炭・原油など)の価格変動を電気料金に反映する仕組みですが、直近3か月の平均燃料価格をもとに2か月後の料金を算定する構造になっています。つまり、原油やLNG価格が今月急騰しても、それが電気料金の請求書に出てくるのは早くて2か月後、実際には3〜5か月後になることが多いです。
資源エネルギー庁によれば、2026年1〜3月の貿易統計価格の平均が確定したことで、6月分の電気料金に適用される燃料費調整単価の算定が行われています。つまり、2月末以降の通航制約による原油・LNG価格の急騰が電気料金に本格的に反映されるのは、2026年6月以降になりやすいということです。
ガス料金も同様の構造です。都市ガスの原料費調整制度では、LNGの価格変動が数か月のタイムラグを経て料金に転嫁されます。ニュースで原油高が報じられている段階では、電気・ガスの請求書はまだ平時に近い水準で来ることがあります。しかし夏に向けて冷房需要が増え、使用量も増えるタイミングで、単価の上昇が重なってくることになります。

[図表1]電気料金の構造と燃料費調整制度の時間差イメージ
出典:資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」
固定型と市場連動型で、リスクの出方が変わる
一方で、市場連動型の電気料金プランを契約している企業は、この時間差が短くなります。電力スポット市場(JEPX)の価格は燃料価格の変動をより直接的に反映するため、原油・LNG高騰の影響が数週間以内に請求額に出やすい構造です。
2022〜2023年の市場価格高騰局面でも、市場連動型契約では請求額が急変し、対応に追われた事業者が相次ぎました。固定単価契約と市場連動契約で、価格変動リスクの出方が大きく異なる点も改めて意識されやすくなっています。とくに特別高圧・高圧の大口需要家は、自社の契約形態が現在のコスト変動にどう影響するかを確認しておくことが実務上の出発点になります。
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