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変わる電力市場、変わる企業判断【第3回】電力調達は「価格比較」から「リスク管理」へ ― 企業が持つべき新しい視点

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これまで2回にわたり、エネルギー価格の上昇が電力市場に与える影響と、企業の電気料金の仕組みについて整理してきました。 第1回では、原油価格の上昇がLNG調達価格を通じて電力市場に影響する構造を見ました。 第2回では、企業の電力契約が「固定料金」と「市場連動」という二つの考え方を軸に変化していることを紹介しました。 そして今、電力調達の考え方はもう一段階進みつつあります。 それが、電力調達を「価格比較」ではなく「リスク管理」として考える視点です。

かつての電力調達は「価格比較」だった

電力自由化が進んだ2016年以降、多くの企業にとって電力会社の選択基準は非常にシンプルでした。
「どこが一番安いか」という比較です。

電力は品質の差がほとんどない商品です。そのため、電力会社の切り替えは「価格比較」で最も安い会社を選ぶという形が一般的でした。
実際、多くの新電力が

  1. 低価格プラン
  2. 長期固定料金
  3. シンプルな料金体系

を武器に顧客を増やしてきました。
しかし、2022年のウクライナショックは、この構図を大きく変えました。

電力価格は「変動する商品」になった

燃料価格の急騰と電力市場価格の上昇により、電気料金はそれまでよりも大きく動くようになりました。実際に電力市場価格の推移を見ると、次のように大きな変動が確認できます。

その結果、

  1. 固定料金の契約リスク
  2. 市場連動価格の変動リスク
  3. 電力会社の調達リスク

といった問題が一気に表面化しました。

電力はこれまで「安定したインフラ料金」というイメージが強かったのですが、現在ではむしろ
エネルギー価格に連動する変動商品という側面が強くなっています。

これは、電力市場が燃料市場や国際情勢とより強く結びついているためです。

企業が向き合う3つのリスク

こうした環境の中で、企業の電力調達にはいくつかのリスクが存在します。
代表的なものは次の3つです。

① 市場価格リスク
JEPXなどの電力市場価格が上昇すると、市場連動契約では電気料金が直接影響を受けます。

② 燃料価格リスク
原油やLNG価格が上昇すると、燃料費調整などを通じて電気料金に影響が出ます。

③ 契約更新リスク
固定契約の場合でも、契約更新のタイミングで市場価格が高騰していると、新しい契約単価が上がる可能性があります。

このように、電力調達には複数のリスクが同時に存在します。
しかも、これらは別々に動くのではなく、重なり合いながら企業のコストに影響してきます。

電力調達の考え方は「ポートフォリオ」に近い

そのため、最近では電力調達を金融商品に近い発想で考える企業も増えてきています。
例えば、次のような考え方です。

  1. 調達先を複数に分ける
  2. 契約期間を分散する
  3. 固定契約と市場連動を組み合わせる

こうした方法は、金融の世界でいう「ポートフォリオ」と似た考え方です。

一つの調達方法にすべてを依存するのではなく、組み合わせによってリスクを分散させることで、価格変動の影響を和らげることができます。
たとえば、全量を市場連動にすると、相場下落時にはメリットが大きい一方で、急騰時の影響もそのまま受けやすくなります。

逆に、全量を固定契約にすると、価格の見通しは立てやすくなりますが、平時にはリスクプレミアム込みの高い単価を抱えやすくなります。
そのため現在は、「固定か市場連動か」という二択ではなく、どう組み合わせるかが実務的なテーマになりつつあります。

「契約によるヘッジ」と「物理的ヘッジ」

さらに最近では、電力調達の選択肢そのものも広がっています。
これまで紹介してきた固定契約や市場連動契約は、いわば契約によるリスクヘッジ(財務的ヘッジ)といえます。
一方で近年増えているのが、電気そのものを自前で確保する「物理的なヘッジ」です。

例えば

  1. コーポレートPPA
  2. 自家消費型太陽光
  3. 蓄電池の活用

などです。
これらは単に電気を購入するのではなく、電力の調達方法そのものを変える取り組みです。

特に電力価格の変動が大きくなる中で、
「どこから電気を買うか」 だけでなく「どこまで自分で電気を持つか」という視点が重要になっています。
再エネ導入は環境対応として語られることが多いですが、実務の現場では電力価格の変動に対する最も強力な防御策として検討されるケースも増えています。

「踏襲」が最大のリスクになる時代

こうした環境の中で、企業の電力調達で注意したいのは、「とりあえず昨年と同じ契約」という判断です。

電力市場の構造が変化している現在、この「踏襲」が実は最も大きなリスクになる場合があります。
燃料価格、電力市場、契約条件が大きく動く中で、調達戦略を見直さないままにしておくと、知らないうちにコスト構造が変わっている可能性もあるからです。

電力調達は経営戦略の一部になりつつある

こうした変化を見ると、電力調達はもはや単なるコスト削減ではなく、企業経営の一部になりつつあると言えます。
電気料金は企業のコスト構造に大きな影響を与えるため、

  1. 価格の安定性
  2. リスクの許容度
  3. エネルギー戦略

といった要素を総合的に考える必要があります。

固定か市場連動かだけでなく、契約期間、調達先の分散、需要パターンとの相性まで含めて見ていく必要があります。
自社だけで判断しきれない場合は、複数の選択肢を俯瞰して見られる立場の専門家に相談しながら整理することも、有効な方法になっています。
電力比較も、単に料金表を並べる作業ではなく、契約条件やリスクの違いまで含めて読み解くことの重要性が以前より高まっています。

電力市場は次のステージへ

電力自由化が始まった当初、電力市場の競争は主に価格でした。
しかし現在は、

  1. 燃料価格の変動
  2. 国際情勢の影響
  3. 電力市場の変化

などにより、電力調達の考え方そのものが変わり始めています。

これからの電力市場では、価格だけでなく、リスクをどう管理するかがより重要になっていくでしょう。

電力価格のニュースを見るときも、その背後にある市場構造や燃料価格の動きを理解することで、より適切な判断につながるはずです。
今回の3回の連載が、電力市場の変化を考える一つの参考になれば幸いです。

関連記事

  1. 変わる電力市場、変わる企業判断【第1回】原油高は電気代にどう影響するのか ― エネルギー価格の連動構造を読み解く
  2. https://pps-net.org/column/159560

  3. 電力市場の変化と企業の意思決定【第2回】企業の電気料金はどう決まるのか ― 固定料金と市場連動の基本構造
  4. https://pps-net.org/column/159843

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