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2026年度以降のFIT動向を解析、事業用太陽光発電(地上設置)はFIT対象外、一部太陽光など前年比で異例の「単価上昇」電源も、再エネ賦課金は4.18円/kWhで前年比約5%増加
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一般社団法人エネルギー情報センター

2026年度FIT制度は物価高を反映し一部価格を引き上げる一方、地上設置型太陽光は27年度に支援を終了します。単純な売電依存の時代は終わり、今後は蓄電池活用やPPA、VPP展開など、制度から自立した総合エネルギー事業への進化が生き残りの必須条件となります。
第7次エネルギー基本計画と再エネの主力電源化
我が国は資源の大部分を化石燃料の輸入に依存しており、国際的な価格変動リスクや国富流出という構造的課題を抱えています。これに対し政府は、2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」において、エネルギー安定供給(Energy Security)と脱炭素(Decarbonization)の両立を掲げ、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の主力電源化を徹底する方針を打ち出しました。
具体的には、2040年度のエネルギーミックスにおいて再エネ比率を「約4~5割」とする野心的な目標が示されています。固定価格買取制度(FIT)においては、この目標達成に向け、国民負担の抑制と地域共生を図りながら、事業者が予見可能性を持って投資を継続できる適切なインセンティブを設計する重要な役割を担っています。
FIT制度の今後については令和8年(2026年)2月、物価高騰という新たな局面を反映した最新の算定意見が取りまとめられました。特に①過剰供給気味とされている太陽光発電を含め、一部電源のFIT買取価格が上がり、②事業用太陽光発電(地上設置)はFIT制度対象外となった2点が大きな変更点です。本記事では、その最新動向や見るべきポイントを解析しています。
終わりを告げた「FIT買取価格右肩下がり」の時代
2012年にFIT(固定価格買取制度)が導入されて以来、日本の再生可能エネルギー政策における絶対的な大前提がありました。それは「技術の進歩と普及に伴い、発電コストは下がるため、FITによる買取価格は毎年引き下げる」という法則です。
しかし、経済産業省・資源エネルギー庁の「調達価格等算定委員会」が2026年(令和8年)2月に取りまとめた報告は、この10年以上続いた常識を根底から覆しました。世界的なインフレ、資材価格の高騰、そして慢性的な人手不足を背景に、一部の電源において買取価格(調達価格・基準価格)が前年比で「上昇」するという異例の事態となったのです。
これは、「コストが上がっても国は再エネの導入を止めない。適切な案件には適正な利潤を保証する」という、国からの強いコミットメントの表れと言えます。
そうした背景もあり、今年度の算定委員会で最も業界を驚かせものの一つが、昨今のマクロ経済環境を反映した価格設定です。近年、下記のような状況もあり、再エネ事業者を取り巻く環境は極めて過酷でした。
- 資材高騰と円安: 太陽光パネル、架台、ケーブルなどの輸入資材価格が、円安とグローバルなインフレにより高騰。
- 物流・建設コストの爆発: 「2024年問題」に端を発するトラックドライバーや建設作業員の人手不足により、工期遅延と労務費の劇的な上昇が発生。
- 金利上昇の足音: 日銀の政策転換に伴う金利上昇リスクが、初期投資の重い再エネ事業の利回りを圧迫。
一部の太陽光発電のFIT買取単価が上昇
事業用太陽光発電(地上設置) 土地造成費や接続費の上昇などを総合的に判断し、一部の規模で価格が引き上げられました。具体的には、50kW以上の区分が8.9円/kWh → 9.6円/kWhとなり、250kW以上(入札対象)は2025年度の入札上限価格(8.90円〜8.68円/kWh)から引き上げられ、2026年度の入札では一律 9.60円/kWhに設定されました(図1)。ただし後述しますが、一時的な値上げがある一方、2027年度以降、事業用太陽光発電(地上設置)はFIT/FIP制度における支援の対象外となります。

図1 太陽光発電の調達価格等について 出典:経済産業省
風力発電も一部区分でFIT買取単価が上昇
陸上風力発電 足元でのコスト上昇を踏まえ、新設(50kW未満)が13円/kWh → 14円/kWhとなり、リプレース(全規模)が12円/kWh → 13円/kWh、新設(50kW以上・入札対象)の 入札上限価格が13円/kWh → 14円/kWhとなりました(図2)。

図2 風力発電の調達価格等について 出典:経済産業省
なお今回の買取価格上昇ですが、単なるコスト上昇の転嫁ではなく、以下の2点を満たしているかを精査した上で価格が反映されています。
- 自立化に向けた取組(コストダウン実績)がなされているか。
- 効率的な事業実施下(トップランナー水準)においてもコスト上昇が生じているか。
既定価格の再設定に関する再エネ特措法上の位置づけ
再エネ特措法上、価格は原則年度ごとに告示されますが、「再エネ特措法第2条の3第1項等のただし書」に基づき、年度当初に想定し得なかった「急激な状況の変化」が生じた場合、既に設定済みの複数年度価格を上書きすることが可能です。今回の改定は、この法的解釈を適用することで、インフレによる投資停滞(認定取得の先送り=スタンバイ)を回避し、2040年目標に向けた投資意欲を維持することを目的としています。
2027年度以降、一部電源がFIT/FIP支援対象外に
今年度のFIT検討および改訂におけるもう一つの大きな焦点は、地上設置型太陽光の「FIT制度からの卒業」です。2027年度より、地上設置は原則としてFIT/FIPの支援対象外となります。
その理由は、自立化の達成が成されたと判断されたためです。入札価格が市場価格を下回るケースや、PPA案件の普及により、公的支援なしで予見性を持った事業運営が可能となりつつあります。
また、負の外部経済性への対応も挙げられます。安全面や景観、自然環境保護の観点から地域社会との摩擦が顕在化しており(負の外部経済性)、支援の軸足を「屋根設置」などの地域共生型へシフトさせる意図も読み取れます。
事業用太陽光発電(屋根設置)支援の継続と自家消費の推進
地上設置が卒業する一方で、屋根設置は引き続き強力な支援対象となります。コスト構造の特異性として、屋根設置の資本費は2021年以降、一定水準で高止まりしており、地上設置のような極端かつ劇的な低下が見られません。実際に2026・2027年度の価格は昨年度の設定値が据え置かれました。
また屋根設置は自家消費と相性が良いですが、2024年度の事業用太陽光発電(屋根設置)の自家消費率は38.1%に達しています。FIT開始からの全設置期間における自家消費率の平均は17.6%のため、これは、低圧区分(10-50kW)に導入された「地域活用要件」が着実に実務上の効果を上げている証左と考えられています。
風力・地熱・中小水力・バイオマスの2026年度以降の取扱い
風力・地熱・中小水力・バイオマスについても、各種変更が加えられています。各電源の主要な変更点としては、下記となります。
- 陸上風力:2027年度にFIP制度へ一本化
- 洋上風力:再エネ海域利用法適用外の入札制を維持しつつ、2028年度にFIP制度へ一本化。
- 地熱・中小水力:2027年度以降も長期安定稼働を前提とした支援が検討されますが、小規模案件には緩やかな自立化を促す方針。
- バイオマス:「一般木質(1万kW以上)」および「液体燃料(全規模)」は、2026年度よりFIT制度対象外となります。円安や燃料費高騰という現在の外部環境下では、「新規に効率的な案件が形成されることが想定し難い」との厳しい判断が下されました。
その他補足事項
入札制度と地域活用要件の変更点があります。大きな点としては、実務上の負担軽減対策として、入札における第2次保証金の繰り越しや免除事由の明確化が行われます。これは事業者の事務負担と資金ロックのリスクを軽減し、開発の円滑化を図るための重要な実務的見直しです。
FIP市場連動の過酷な現実 ~価格変動制の要素導入や「売れない」ジレンマ~
地上設置の支援終了と並行して、再エネ事業を待ち受けているのがFITからFIPへの完全移行です。ここで重要なのは、FIT制度という電力市場価格に収益性が影響するため、固定価格よりも予見性が低く、「無条件で儲かるわけではない」という点です。
ダックカーブと「0.01円」の収益性
FIP制度下では、事業者は自ら日本卸電力取引所(JEPX)などの電力市場で電気を販売する必要があります。しかし現在、太陽光発電の大量導入により、春や秋の晴天時の昼間は電力が余り、JEPXの取引価格がシステム上の最低価格である「0.01円/kWh」に張り付く現象(ダックカーブ現象)が常態化しています。市場価格がゼロに近ければ、そこに国からのプレミアムが上乗せされても、事業を維持するための十分な収益を得ることは困難です。
出力制御のリスク
さらに電力が需要を上回った場合、送電網のパンクを防ぐために「出力制御(発電の一時停止命令)」が発動されます。せっかく発電しても売ることすらできず、収益がゼロになる時間帯が発生するのです。つまり、単にパネルを並べて「昼間に作った電気を市場に垂れ流す」だけのビジネスモデルは、もはや制度設計上、利益が出ない構造に陥っています。
2026年度以降の次世代再エネビジネス「3つの生存戦略」
物価高による初期投資の増大、昼間の電力価値の暴落、そして地上設置の締め出しなど、今後の再エネ事業の成功のためには、制度や社会構造の変化などに対応していく必要があります。この複雑で過酷な難局を乗り越え、次世代の勝者となるための戦略は、以下の3つの方向に集約されると考えられます。
戦略①:「太陽光+蓄電池」によるタイムシフト(裁定取引)
FIP制度下で収益を上げるための最大の武器となるのが「蓄電池」の併設です。昼間の価値がゼロに近い電力を市場に流さず蓄電池に貯め込み、需要が増えて市場価格が高騰する夕方から夜間にかけて放電して売却する「タイムシフト(エネルギートレーディング)」が不可欠です。物価高によって蓄電池自体の導入コストも上がっていますが、国や自治体(東京都など)の補助金をフル活用し、「安く貯めて高く売る」システムをいかに効率的に構築できるかが勝負の分かれ目となります。
戦略②:制度に依存しない「コーポレートPPA」への完全シフト
国のFIT/FIP制度や市場価格の乱高下に振り回されない究極の防衛策が、需要家(企業)と直接長期契約を結ぶPPA(電力購入契約)モデルです。オンサイトPPAは優遇されている「屋根上」を活用し、第三者所有モデルで工場の屋根にパネルを設置、直下で電力を消費させるモデルです。一方でオフサイトPPAは、遠隔地の発電所から送電網を介して特定の企業に再エネを供給するモデルです。
現在、企業側も電気代(再エネ賦課金含む)の高騰に苦しんでおり、「電気代の固定化・削減」と「脱炭素(RE100やESG対応)」を同時に実現できるPPAのニーズは高まっています。市場を通さず、相対取引で20年間の固定収益を確保するPPAは、今後の再エネ開発の中核となり得ます。
ただし、PPAは良いことばかりに見えますが、どの企業でもPPAで簡単に儲かる訳ではなく、その特性上、安価な新電力会社よりも原則高額になることと、契約が20年など長期にロックされるデメリットもあります。単純な再エネ電力の調達においては、コスト競争力という面では劣後しやすい側面もありますが、安定的な環境貢献電源といったメリットとデメリットの双方を考慮し、バランスを見て事業を進めるかの適切な判断が必要となります。。
戦略③:アグリゲーター連携と「VPP(仮想発電所)」の展開
FIP制度では、事前の発電計画と実際の発電量を一致させる「計画値同時同量(バランシング)」の必要性が高まり、外れた場合はペナルティ(インバランス料金)が発生するケースがあります。天候に左右される再エネでこれを単独で行うのは困難なため、最新のAIによる気象・市場予測システムを持つ「アグリゲーター(集約事業者)」との連携が今後より重要になっていくでしょう。
複数の屋根上太陽光や蓄電池をIoTで束ね、一つの巨大な発電所のように制御する「VPP」のネットワークに組み込まれることで、インバランスリスクを回避するだけでなく、需給調整市場や容量市場といった新たな市場での収益機会(アンシラリーサービス)を獲得することが可能になります。
2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhで前年比約5%増加
FIT制度の原資ですが、どこからお金が出ているかというと、皆さんが支払っている再エネ賦課金から拠出されています。また再エネ賦課金単価については、毎年度、当該年度の開始前に、再エネ特措法で定められた算定方法に則り、経済産業大臣が設定しています。
2026年度の賦課金単価は、再エネの導入状況や卸電力市場価格等を踏まえ、1kWh当たり4.18円となりました(図3)。目安として1ヶ月の電力使用量が400kWhの需要家モデルの負担額を見ると、月額1,672円、年額20,064円となります。なお、2026年度の賦課金単価は、2026年5月検針分の電気料金から2027年4月検針分の電気料金まで適用されます。

図3 再エネ賦課金単価の構造 出典:経済産業省
価格上昇やFIT電源対象外化が突きつける「真の自立」への問い
2026年度のFIT制度における報告一式は「物価高による買取価格の引き上げ」という異例の措置を通じて、「国は再エネの火を絶対に消さないが、無秩序な開発や思考停止の売電ビジネスはもはや許容しない」という強いメッセージを発信したものと考えられます。
その一方で、単純なパネルを野立てに並べてFITで国に買い取ってもらう時代は完全に終わりを告げつつあります。これからの再エネ事業者は、資材高騰という経済的ハードルを越えながら、例えば太陽光発電であれば屋根という限られたスペースを最大限に活用し、蓄電池による需給調整機能を持たせ、企業に直接環境価値を届ける「総合エネルギーソリューション企業」へと進化しなければなりません。
昨今の状況を鑑みると、再エネ事業は「昔のように楽に儲かる」から転換を迎えつつあるように考えられます。例えば安易なFIT価格のつり上げや、非化石価値をマーケットが本来求める均衡価格よりも無理に引き上げるなどによって、再エネ事業を「安易な利益創出事業」とする方向よりも、正しい努力を行った事業者にはインセンティブが与えられる制度設計が望ましいと考えられます。
FIT制度に関しては良い方向に進んでいると筆者は考えており、実際にFITの対象外となる電源種別も散見されるようになってきています。地上設置の太陽光発電などについては、日本の電力インフラを支える自立した主力電源へと生まれ変わるための、国からの「最後の投資」と言えるのが2026年度でしょう。その後の長期的かつ持続的な再エネ事業については、激動の2026年以降を乗り越えた企業だけが、真の脱炭素社会の勝者となる権利を手にすることができるものと想定されます。
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一般社団法人エネルギー情報センター
上智大学地球環境学研究科にて再エネ・電力について専攻、卒業後はRAUL株式会社に入社。エネルギーに係るITを中心としたコンサルティング業務に従事する。その後、エネルギー情報センター/主任研究員を兼任。情報発信のほか、エネルギー会社への事業サポート、また法人向けを中心としたエネルギー調達コスト削減・脱炭素化(RE100・CDP等)の支援業務を行う。メディア関連では、低圧向け「電気プラン乗換.com」の立ち上げ・運営のほか、新電力ネットのコンテンツ管理を兼務。
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