法的分離

発送電分離とは

電力の発電と送電を別々の事業者が行うように発電と送電のネットワークを分離して、すべての電力事業者が平等に利用できるようにすることです。2016年現在では、10地域別に電力会社が独占的に電力を供給することを日本政府から認められていますが、2020年までに日本政府は発送電分離を行うとしています。

発送電分離が行われる背景

それでは何故発送電分離を行うことになったのでしょうか。それには電力の自由化が背景にあります。電力の自由化とは1995年に発電部門での参入規制が撤廃されたことを皮切りに、2005年には「日本卸電力取引所」での電力の市場取引が開始され、2016年には家庭に対しての電力の小売供給も認められるようになるなどの、これまで独占されていた発電部門を自由化し、消費者が自由に電気の供給事業者を選択できるようにして、事業者間での競争を行わせることで電気料金を低く抑えることを期待する動きです。

しかし、電力の自由化を行う中でも送配電部門に関しては引き続き規制事業として独占が認められています。なぜなら、電力事業者が自由に電柱を立てて電線がそこら中に張り巡らされているような状況にするわけにはいきませんし、送電や配電には莫大な設備投資が必要であり、維持にも多くのコストがかかるため、規模の大きな一社で供給を担うほうが供給コストは小さくなるからです。

このような背景を踏まえると発電を自由化するだけでは電力市場の自由化が完全ではないことがわかります。電力を供給する送配電手段が独占されているため、発電事業の競争相手に対して送電線の利用を制限したり、利用料金を不当に高くすることができてしまい、実質的に競争が制限されてしまうのです。したがって、電力の自由化を達成するためには送配電部門は中立な立場でなくてはいけません。そのために発電部門と送配電部門を分離する発送電分離が必要とされているのです。

 法的分離とは

日本で有力とされている発送電分離の方法が「法的分離」で、フランスなどで実際に採用されている方法です。これは送配電部門を既存の電力会社から分社化し、グループ会社にして法的に経営を分離することで送配電部門の中立性を可能な限り担保するというものです。

 法的分離のメリット

発送電分離には他にもいくつか方法がありますが、法的分離を選択する大きなメリットしては他の方法と比べ、効率的な送配電設備を維持しながらも、インバランス調整等に要するコストの透明性が高いということが挙げられます。インバランスとは発電の供給と需要が一致しないことです。電力の供給においては安定的に電力を供給するために常に電力の需要と供給を一致させなければならない「同時同量」が原則だと考えられています。

法的分離のデメリット

法的分離のデメリットとしてはあくまで既存の電力会社のグループ会社として送配電部門が存在するため、完全に分離する場合と比べて中立性の担保度合が小さいことが挙げられます。送配電部門の会社が既存の電力会社の競合他社を不利益に扱うインセンティブを完全には排除しきれないため、何らかの政府による規制、監視体制は必要でしょう。しかし、完全に分離することは難しく、このデメリットは現状の効率的な配電設備を維持できるというメリットと背中合わせであるため、現在実現できそうな範囲内では最も中立性を担保できる方法であるといえます。

法的分離に向けての現在の取り組み

東京電力は2016年4月には持ち株会社制を導入し、持ち株会社の下に発電事業会社、送配電事業会社、小売事業会社を置く方針を打ち出すなど発電と送電の法的分離に向けて動き出しており、その他大手電力会社も含めて送配電部門の分社化を義務づける改正電気事業法が2015年6月17日に参議院で成立するなど着々と発電と送電の法的分離に向けて動き始めています。

しかし、欧米の先行事例から必ずしも市場原理を導入すれば電気料金が必ずしも安くなるわけではないということが分かっており、安価に貯蔵できない電力市場の不安定性からも電力供給を不安定にするという反対の声も多いなど解決すべき問題も多く存在しています。