デマンドレスポンス

デマンドレスポンスとは

デマンドレスポンス(Demand Response : DR)とは、経済産業省によると「卸市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用を抑制するよう電力の消費パターンを変化させる」ことと定義されています。

背景

電力会社の基本方針の一つに「同時同量の原則」があります。電力の需要量と供給量を瞬時瞬時で一致させなければならないというものです。電力の需要量と供給量が一致しない場合、電圧や周波数などの電気の品質が低下し、最悪の場合大規模な停電が発生してしまいます。そのため各電力会社は、それぞれが担当する地域の電力の需要量と供給量を一致させ、電力を安定供給する義務があります。

この需給バランスを保つためには、「供給量を需要量に合わせる」と「需要量を供給量に合わせる」という2つの考え方があります。前者が、これまで電力会社が行ってきたことであり、世界的に見ても一般的な考え方でした。しかし、この場合、各電力会社は供給量よりも過剰に発電設備を用意しておく必要があります。予測を上回る需要量があった場合の対処が困難となるためです。この過剰な発電設備は低い稼働率にもかかわらず運営費用が嵩むため、結果的に電気料金の高騰に繋がります。

そして、後者が新しい考え方であり、デマンドレスポンスに関係しています。元々の概念は、1990年にロッキー・マウンテン研究所のエイモリー・ロビンス博士が「ネガワット」として発表しました。ネガワットとは、需要家が節約することで余剰となった電力を発電した電力と同等とみなす考え方です。供給側が電力状況に応じて需要家側に協力を募り、余剰電力を生み出すことによって、容易に需要量を供給量に一致させることができます。これがデマンドレスポンスです。

デマンドレスポンスの概要

上述のように、デマンドレスポンスは、電力の供給側である電力会社が需要家側に電力の節約をしてもらうよう促すことで余剰電力を生み出し、一方で、需要家側はその分の対価を受け取ることができる仕組みとなっています。電力需要のピーク時間帯に火力発電などコストの高い電源で焚き増しが行われている場合、デマンドレスポンスによって電力需要を抑制することで、コストの高い電源の焚き増しを抑えられる可能性があります。デマンドレスポンスは、需要制御の仕方によって、大きく2つに分類されます。

①電気料金型デマンドレスポンス

・概要

需要量がピークとなる時間帯に電気料金を値上げすることで、各家庭や事業者に電力需要の抑制を促す仕組み。

・メリット

比較的簡便であり、大多数に適用することができる。

・デメリット

余剰電力が需要家の反応に左右されるため、どれほどの効果があるか不確実である。

②ネガワット取引

・概要

電力会社との間であらかじめ節電する契約を結んだ上で、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に対価を得る仕組み。

・メリット

あらかじめ契約しているため、ある程度の効果が見込める。

・デメリット

比較的手間がかかり、小口需要家への適用が困難である。

関連した動き

これまで国内及び国外において、デマンドレスポンスに関する複数の実証実験が行われてきました。

国内の事例

・「横浜スマートシティプロジェクト」/ 横浜市

横浜市は、平成22年に経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として選定を受け、本プロジェクトを開始しました。国内のエネルギー関連事業者や電機メーカーなどと連携し、既成市街地へのエネルギー需給バランスの最適化に向けたシステムの導入及び実証に取り組みました。

・「北九州スマートコミュ二ティ創造事業」/ 北九州市

横浜市と同様、経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として選定を受け始まったプロジェクトです。デマンドレスポンスに関連した取り組みとしては、電力の需給に応じて電力料金を変化させるダイナミックプライシングの実証を行っています。

国外の事例

・「Gridwise Olympic Peninsula Demonstration Project」/ 米国

米エネルギー省(DOE)の国立研究所であるPacific Northwest National Laboratoryにより2008年に行われたプロジェクトです。スマートメーターを用い、5分間隔のリアルタイム・リプライシング(電気料金をリアルタイムで変動させることで、電力の需給バランスを調整すること)の効果をブロードバンド環境で実施しました。

・「E-Energy」/ ドイツ

ドイツ政府は、環境と経済面からエネルギーの長期的な安定供給を実現することが国の最優先課題と捉えており、エネルギー供給システムを管理・制御し、最適化を図る「E-Energy」構想の実現を進めています。

今後の展望・可能性

日本では、2017年4月より「ネガワット市場」が創設されます。これにより、家庭や企業が節約した電力を売買できるネガワット取引が普及し、それに伴いデマンドレスポンスも拡大していくことが予想されます。