中国の電力自由化

電力自由化とは

電力自由化とは、従来独占されてきた電気市場において市場への新規参入を緩和し、市場競争を導入することです。電気料金の引き下げや電気事業における資源配分の効率化を目的とします。電力市場の自由化と表記されることもあります。

背景

電力事業には「規模の経済(*)」があると考えられてきたため、多くの国で電力会社による地域独占が認められてきました。ところが、発電能力に対して需要が増大したことや、技術進歩により小規模で安価な発電が可能になったことにより、発電について「規模の経済」が重要ではなくなりました。

さらに、情報技術の発達によって複数の供給者間で需給調整が瞬時に行えるようになったことで、分散的な発電が可能になりました。こうした環境の変化により、世界各地で電力自由化の動きがみられるようになりました。

(*)生産量の増大に伴い、原材料や労働力に必要なコストが減少する結果、収益率が向上すること(デジタル用語集)

中国の電力自由化

中国の電力自由化は2002年から緩やかに始まりました。電力監督機関である国家電力監管委員会は、「区域電力市場建設に関する若干の指導意見」、「電力市場運用基本規則」、「電力市場監管規則」、「電力市場技術サポートシステム機能規範」などを制定し、東北地区、華東地区、南方地区などで区域内での電力市場の自由化を試験的に実施しました。また、大口消費者の電力取引を自由化や発電企業間の競争性の導入など、電力価格メカニズムの改革に取り組んできました。

2015年11月末、国内経済の研究や調整などを行う中国国家発展改革委員会は、電気の末端利用者が発電会社と直接価格交渉することを認め、国有の電力販売会社による独占を廃止すると発表しました。

発電会社は地域ごとの電力取引プラットホームを通じて顧客に電力を販売することができるようなり、電力の市場価格の引き下げが実現するとみられています。今後は国家電網と中国南方電網、内蒙古電力(集団)が送電網を運営し、政府が定める手数料で送電を担う計画です。

中国の電力事情

1949年の中華人民共和国成立以来、中国の電気事業は国家直営で行われていました。 1997年の行政改革により、中央政府の電気事業運営部門が国有企業「国家電力公司」として分離され、発電から送配電までを担う垂直統合型の電力会社が誕生し、政治機能と企業機能を分離する「政企分離」が行われましたが、国営企業による電力事業の独占が続くことになります。

中央政府は2002年末、電力体制改革を実施しました。その結果、発電部門と送電部門が分離し、国家電力公司は送配電事業を営む国家電網公司と南方電網公司の2社と、発電事業を営む5大発電会社(中国華能集団公司、中国大唐集団公司、中国華電集団公司、中国国電集団公司、中国電力投資集団公司)に分割されました。

その後は、前述の送配電会社2社が、5大発電会社などから電力を購入し、それらの傘下の区域電網公司、省電力公司、省電力公司が管轄する市・県の配電会社を通じて需要家へ電力を独占的に供給していました。

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