北欧の電力自由化

電力自由化とは

独占状態であった既存の電力会社以外の参入を促進し、企業や個人の選択肢を増やすために、国の規制を緩和する改革です。従来、電力は政府に決められた一般電気事業者による独占提供がなされてきましたが、市場参入の規制が緩和され、電力業界に新規事業者が多数参入し、消費者が電力供給会社を自由に選べるようになりました。

電力自由化の目的

自由競争による電気料金の引き下げや電力需給の効率化・最適化を進めることを目的としています。

北欧の電力自由化 背景

1991年、北欧の中でも電力消費量の多いノルウェーが電気事業の再編・電力市場の自由化を先導しました。同年にエネルギー法が可決され、ノルウェーの国営電力会社であるStatkraftverkeneが送電会社と発電会社に分離され、発電分野の自由競争が実現しました。そして、1996年から電力会社間の自由な電力取引が可能となり、一般家庭を含めた電力需要家は電力会社を自由に選べるようになりました。

1996年、ノルウェーは園内の電力自由化を行ったスウェーデンと電力市場を統合し、共同の電力市場“Nord Pool“(ノルドプール)が開設され、その他の国も以下のように加入していきました。1997年7月にデンマーク西部地域(ユトラント半島及びヒュン島)1998年6月にフィンランド2000年10月にデンマーク東部地域(ジーランド島等)こうして、北欧4ヶ国をまたがる国際電力取引市場が実現しました。2016年現在、ノルドプールの年間取引量は世界最大規模を誇っています。

 北欧の電力自由化の取り組み

北欧4カ国の電力供給を統合したNord Poolでは安定した電力供給と発電部門の競争を生んでいます。Nord Pool では、1時間単位の価格と取引量を入札して決定する電力取引、定められた期日に一定条件での受け渡しを約束する契約取引の2つの仕組みで売買が行われています。Nord Poolは任意プール制ですが、他の相対契約はここでの価格を参照して取引を行うのでNord Poolが電力卸売市場の中心となっています。

また、発電・売電分野で取引契約の自由を認める一方で、送電・配電分野では送電会社は国家独占に、配電会社は地域独占になっています。このように自由競争が発生する発電・充電分野と競争が働かない送電・配電分野を切り離すことで、アメリカで見られたような電力自由化による供給の不安定化などの問題は生じていません。

北欧の電力自由化 成功の要因

ノルドプールの設立に伴い北欧4ケ国で国際連携電力取引を実施できる環境が整い、市場規模が拡大され調整能力が高くなった部分が大きな成功の要因であるといえます。北欧は地球温暖化の対策として「再生可能エネルギーの導入」を行っているので、一国では吸収しきれない不安定な電力を国際連携によりそれぞれの発電方法で補完することが可能になっています。また、規模が大きく、発電や需要の時間帯にばらつきがあるため規模の大きさで調整が可能となっています。

北欧4か国の電源構成

  1. ノルウェー  :水力発電
  2. スウェーデン :水力発電・原子力発電
  3. デンマーク  :火力発電・風力発電
  4. フィンランド :火力発電・原子力発電・水力発電

上記のようになっており、ノルウェーだけで全体の約50%(2011年度)の電力を占めています。電力政策や規模が全く違う4か国で連携を取り、電力の補完を行っています。

■ノルウェー

地理的条件に恵まれ、欧州最大の水力発電国となっています。国内電力をほぼ水力発電国でまかなっていますが、渇水となった時期に他国から輸入できるというシステムのもと成り立っています。

■スウェーデン

いままで原子力発電と水力発電に依存してきましたが、政府は国民の声から原発の廃止を見据え、風力発電などの再生可能エネルギーのシェア拡大を中長期的に目指す方針を打ち立てています。

■デンマーク

元々、約90%の電力を海外のアラブ諸国からの石油による火力発電に頼っていましたが1970年代のオイルショックを受け、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーに移行しました。不足分は、近隣国家から輸入することで、自国のCO2排出量の減少に成功しています。

■フィンランド

エネルギー資源が乏しいので、エネルギー自給率を高めることを政策の中心的課題としています。政策の一つとして1997年から原子力発電が導入されましたが、エネルギーの輸入依存度が高く、国際連携は欠かせません。

北欧での電力自由化の影響

自由化後も電気料金はあまり下がらず、地域間で電気料金の格差が生まれています。デンマークでは風力発電など、水力のように発電コストの低い再エネ発電設備を設置しづらい環境のため、ノルウェーの2倍程の電気料金を一般家庭が負担しています。新規参入に伴いサービスが多様化し、利用者それぞれに合った料金プラン等が提供されています。例えば、スウェーデンでは、安価なメニュー・風力100%のメニュー・再生可能エネルギーのみのメニューなど多彩な選択肢が可能になりました。

スマートグリッドを前提とした北欧の電力自由化

スマートグリッドとは、IT(情報技術)の力で電力供給者と需要者をリアルタイムに繋ぎ、電力の需給を最適化する、次世代の電力網のことを指します。

北欧はデンマークの風力発電をノルウェーの水力発電で補完するといったように不安定な再生可能エネルギーを補完しあって成り立っており、今後他国も風力発電などを大幅に増加させる計画になっているので、電力の安定化対策として、電力需要をスマートメーター(電力量計)によって最適な形へ誘導する必要があると考えられています。この手段としてスマートグリッドが考えられます。