業界初、エネルギーハーベスティングによるIoT技術を活用したスマート農業

2017年05月17日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

業界初、エネルギーハーベスティングによるIoT技術を活用したスマート農業の写真

4月25日、ふくしま未来農業協同組合は、NTT東日本の圃場センシングソリューションを導入し、4月より運用を開始したと発表しました。果樹の防霜対策を目的としており、業界初のエネルギーハーベスティングによるスマート農業の推進事例となります。

業界初、エネルギーハーべスティングでスマート農業

JAふくしま未来の管内は、全国有数の果樹(桃・梨・苺・林檎・あんぽ柿等)、そして野菜(胡瓜・とまと・にら・なす等)の産地であり、さらに、米・花卉・畜産とバランスのとれた産地となっています。こうした果樹の栽培において、「霜」は重大な被害をもたらすこともありますが、その対策に発生する人的負担が課題となっていました。

JAふくしま未来によるこれまでの「霜」対策は、果樹園地内で燃焼剤を燃やし空気を対流させ温度を上げるものでした。毎年果樹の開花期となる4月から防霜対策本部が設置され、霜注意報が発令されると職員・組合員約60人が、福島地区に点在する56箇所の観測地の温度を夜明けまで観測する形です。

そのような人的負担があるので、これまでも温度観測の自動化は検討されてきましたが、回線コストや電源設置の必要性から導入が見送られてきました。しかしながら、回線費用を抑えられ、かつ電源不要なメリットが後押しし、JAふくしま未来は「eセンシング For アグリ」の運用を4月より開始しています。今回の取り組みは、エネルギーハーベスティングに基づくLPWA(省電力で通信できる無線通信技術)を利用したセンシングによる生産管理を行う、業界で初めての事例となります。

収集したデータで生産性向上をサポート

「eセンシング For アグリ」とは、スマートフォンアプリやPC等を用いて、「温度」・「湿度」・「照度」などの圃場環境を“見える化”するソリューションです。電源不要のセンサーと無線通信機器を圃場に設置することで、NTT東日本が提供するオンラインストレージサービス「フレッツ・あずけ~る」にセンシングデータが自動収集されます(図1)。

特徴としては、まず小型太陽光パネルを利用したエネルギーハーベスティング(環境発電)により、電源工事不要でセンサーや無線通信用送信機の設置が手軽にできる点が挙げられます。また、センシングデータを無線通信(LPWA)経由で受信機に送信するので、センサーごとのモバイル回線の費用を負担する必要がありません。加えて、観測データはインターネット経由で確認することができるので、農業従事者同士で情報共有が可能となります。収集した観測データはスマートフォンのアプリ上で閲覧できるほか、観測データが事前に設定した閾値に達した場合は警報メールが送信されます。

この「eセンシング For アグリ」で収集されたセンシングデータは、農業の生産性向上のサポートに役立ちます。例えば、観測データに基づいた営農指導、農業従事者同士の栽培に関する情報交換、熱中症予防の呼びかけなどが挙げられます。

「eセンシング For アグリ」の概要

図1 「eセンシング For アグリ」の概要 出典:NTT東日本

農業データ連携基盤が本年中に構築予定

今回の事業におけるキーワードの一つ「スマート農業」とは、先端技術を活用したイノベーションにより「超省力」「快適作業」「精密・高品質」を実現する新時代の農業です。日本においては、平成28年6月に名目GDP600兆円に向けた成長戦略として「日本再興戦略2016」が閣議決定され、農業分野では「革新的技術の導入による生産性の抜本的改善」が掲げられました。この中で「AIやIoTの活用により飛躍的な生産性の向上を図るプロジェクトの実施」等の旨が記載されました。

農業が抱える課題と人工知能やIoTの活用の可能性としては、例えば農業就業者の減少・人手不足に対する対策があります。例えば、ロボット化・自動化された超省力農業や、病害虫の画像解析等で誰でも取り組みやすい農業の実現が期待されます。そのほか、収益性の確保・未知リスクの顕在化・生産・流通・消費の連携・効率化といった効果により、新たな価値を創出していくと想定されます(図2)。

農業における人工知能やIoTの活用の可能性

図2 農業における人工知能やIoTの活用の可能性 出典:農林水産省

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

蓄電池×エネルギーマネジメント 第3回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年04月15日

新電力ネット運営事務局

蓄電池×エネルギーマネジメント 第3回

EVと並んで蓄電池と大きな関わりのある「エネルギーマネジメント」にテーマを絞って、蓄電池の今と未来を全6回に渡ってご紹介していきます。

エネルギーデジタル化の最前線 第22回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年08月21日

新電力ネット運営事務局

エネルギーデジタル化の最前線 第22回

積水化学工業(大阪市北区)は年間約10,000棟の戸建てを供給する大手ハウスメーカーだ。住宅そのものの性能向上に加えて、省エネ設備、太陽光発電を搭載し、光熱費収支ゼロ、エネルギー収支ゼロを目指した高性能住宅を展開している。さらに、蓄電池やV2Hといった蓄電技術を強化し、災害のレジリエンスを高め、昼も夜も電気を自給自足できる住宅を目指す。今回は積水化学工業の取り組みを紹介する。

エネルギーデジタル化の最前線 第21回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年07月16日

新電力ネット運営事務局

エネルギーデジタル化の最前線 第21回

前編から引き続き、大和ハウス工業(本社大阪市)のIoTに対する取り組みを紹介する。(後編)

エネルギーデジタル化の最前線 第20回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年06月20日

新電力ネット運営事務局

エネルギーデジタル化の最前線 第20回

コネクティドホームや、蓄電池やエネファームを組み合わせることで、より災害に強い住宅を実現するなど、エネルギーデータを活用した先進企業として、大和ハウス工業を紹介する。(前編)

エネルギーデジタル化の最前線 第19回の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年05月19日

新電力ネット運営事務局

エネルギーデジタル化の最前線 第19回

幅広いIoT機器に対応するプラットフォームを提供。AIによる電力と生活環境データ解析をもとに、お客様にあわせた独自のサービスを開発。ソフトバンクグループのベンチャー企業、エンコアードを紹介する。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス ビジネス屋と技術屋が一緒に考える脱炭素