ほぼ100%の変換効率へ、省エネかつ長寿命なディスプレイ、ケンブリッジ大学が発見
政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
2017年04月19日
一般社団法人エネルギー情報センター
3月30日、ケンブリッジ大学はイースト・アングリア大学、東フィンランド大学とのチームにおいて、変換効率がほぼ100%のディスプレイを開発したと発表しました。分子を回転させるこの新技術により、これまでより明るく・省エネでかつ長寿命なポテンシャルを実現します。
これまでのOELD、25%のみが明るい状態に変換
世界の電力の5分の1は光を発生させるために使用されており、ディスプレイや照明の省エネは大きな研究テーマの一つです。そうした中、ケンブリッジ大学、イースト・アングリア大学、東フィンランド大学のチームは、数十年にわたりディスプレイの性能向上を阻害してきた悩みを解決する材料を発見しました。
研究チームが開発した技術は、分子を利用することで光を生み出すOLED(有機EL)に関するものです。このOLEDは1980年代に発明され、現在ではテレビやPCなどのディスプレイに広く使われていますが、現状では光への変換効率が十分ではないという問題を抱えています。
OLEDの分子に電流を通すと、それらは活動状態になりますが、その内の25%だけが光を急速に発する「明るい」状態となります。残りの75%は暗い状態のままであり、電力が明かりではなく熱に変換されるので、エネルギーの無駄につながります。この暗い状態の分子が生み出す熱量は、旧式のフィラメントを使う白熱電球より大きくなります。
銅と金を使うことで、分子を回転
OELDにおいて明かりを生み出すうえで、暗い状態の部分は望ましい状態ではありません。この問題を解決する手法の一つとして、レアメタルであるイリジウムルを用いて分子の回転を変え、光の放出を促すようなアプローチも取られました。しかし、この方法では分子の回転に時間がかかるため、OLEDに損害を与えるので、結果として不安定になります。
一方でイースト・アングリア大学の研究者らは、2つの異なる有機分子を、銅や金の原子で接合するという新しい技術を開発しました。接合された2つの分子はプロペラのような形状となっており、このプロペラを回転することで、暗い状態の分子がねじれ、光を生み出すことが可能となります(図1)。
図1 OLEDの様子 出典:ケンブリッジ大学
イリジウムを利用していた時は、暗い状態を明るく変換することが可能でしたが、OLEDへダメージが残るという問題がありました。しかし、今回の新しい技術ではOLEDにダメージを与えることなく、ほぼ100%の変換効率を達成することができます。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
---|---|
所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
電話番号 | 03-6411-0859 |
会社HP | http://eic-jp.org/ |
サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年03月06日
EVと並んで蓄電池と大きな関わりのある「エネルギーマネジメント」にテーマを絞って、蓄電池の今と未来を全6回に渡ってご紹介していきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2023年09月27日
ワイヤレス化など、進化するEV充電器。国内外のビジネス事例は?最新動向②
これまで遅れをとっていると指摘されてきたEV充電インフラですが、2030年までの充電インフラ15万基設置目標を政府が掲げ、民間での動きが活発になっています。国内外のビジネス事例の最新動向をご紹介します。