中国電力、「石炭灰」製品を販売拡大するため体制強化、緑化基盤材や土壌改良材などに活用

2017年03月15日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

中国電力、「石炭灰」製品を販売拡大するため体制強化、緑化基盤材や土壌改良材などに活用の写真

3月15日、中国電力は石炭火力発電所から発生する「石炭灰」を活用した製品の製造・営業・販売を、グループ会社である「中国高圧コンクリート工業」へ移管したと発表しました。中国電力グループとして、さらなる販売拡大を目指すための体制強化を行った形となります。

中国電力、石炭灰事業をグループ会社に移管

石炭を燃焼すると約1割の石炭灰が発生しますので、その「石炭灰」の有効利用は課題となります。中国電力は、石炭灰製品(ライトサンド、Hiビーズ、エコパウダー)の製造・営業・販売を、2017年4月からグループ会社である中国高圧コンクリート工業へ移管します。この事業移管の目的は、「製品の販売拡大」、そして「グループ全体における業務効率の最適化」の2点となります。

事業移管後は、中国電力がこれまで蓄積してきたノウハウや、中国高圧コンクリート工業から提供される営業情報に基づき、事業戦略の策定や新商品の研究等に集中的に取り組むとしています(表1)。

両社の役割
中国電力 事業戦略の策定、製品活用手法の検討、新商品研究・開発
中国高圧コンクリート工業 既存設備による製品製造、貯蔵・管理、営業、販売

表1 出典:中国電力資料より作成

中国高圧コンクリート工業は、中国電力の三隅発電所(島根県)、新小野田発電所(山口県)、水島発電所(岡山県)構内の既存製造設備を利用することで、石炭灰製品を製造します(表2)。製造のほか、これまでの事業活動で得られた販売網を活用することで、土木環境用資材として石炭灰製品を販売することを目指します。

各発電所の製品生産能力
三隅発電所 新小野田発電所 水島発電所
Hiビーズ 約5万t/年
ライトサンド 約3万t/年 約3万t/年 約1万t/年
エコパウダー 約2万t/年 約4万t/年

表2 出典:中国電力資料より作成

今後、中国電力と中国高圧コンクリート工業は、石炭灰処理業務の委託に係る「灰処理契約」を締結することとなります。また、石炭火力発電所構内の石炭灰製品製造設備を利用するための「賃貸借契約」を結び、事業を移管することとなります(図1)。

業務移管のイメージ

図1 業務移管のイメージ 出典:中国電力

フライアッシュとクリンカアッシュを活用した製品

石炭灰とは、石炭を燃焼する際に生じる灰の一種ですが、石炭灰には大別して「フライアッシュ」と「クリンカアッシュ」というものがあります。「フライアッシュ」は、石炭火力発電のボイラー内で発生する灰の粒子が集塵機で集められたものです。一方、燃焼によって生じた石炭灰の粒子が溶解して相互に凝縮し、ボイラー底部の水槽に落下堆積したものをクリンカアッシュといいます。フライアッシュとクリンカアッシュの割合は、概ね9:1です。

中国電力グループでは、フライアッシュを「Hiビーズ」と「エコパウダー」に、クリンカアッシュを「ライトサンド」という製品にすることで販売します(図2)。下記にて、これら3種類の製品概要について見ていきたいと思います。

石炭灰製品の概要

図2 石炭灰製品の概要 出典:中国電力

Hiビーズ、水質改善などで活用可能

中国電力では、石炭火力発電所から発生する石炭灰を造粒し、砂の代替材となる「Hiビーズ」を2000年から製造・販売しています。Hiビーズは、石炭灰(フライアッシュ)を造粒・固化した材料で、覆砂材等の環境改善材および地盤改良材として活用されています。

Hiビーズは、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録された製品です。また、リサイクル製品として島根県の「しまねグリーン製品」および環境省の実証済み技術として認定されています。海域沿岸、河口の底質の環境改善、港湾の地盤改良に実績があり、用途に応じた造粒径の商品が販売されています(図3)。

利用された事例としては、例えば「広島市中心部の京橋川」における底質環境です。広島市中心部の京橋川周辺では、オープンカフェや水上タクシーにより、河岸を利用した賑わい創りに取り組んでいます。そうした影響もあり、京橋川はヘドロが干潟全体に堆積し、歩行は困難で硫化水素臭が発生していました。しかし、2013年にHiビーズで覆砂したことにより、底質環境が改善されました。それにより、歩行可能となり、硫化水素臭もなくなりました。

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Hiビーズの活用イメージ

図3 Hiビーズの活用イメージ 出典:中国電力

エコパウダー、コンクリート用混和材などで活用可能

エコパウダーはHiビーズと同様に、フライアッシュから生成される製品です。エコパウダーの品質は、コンクリート用フライアッシュ(JIS-A-6201)のJIS規格に適合しており、コンクリート用混和材等として活用できます(図4)。

エコパウダーは、「島根県 しまね・ハツ・建設ブランド[土木分野]」に登録されています。利用された事例としては、コンクリート二次製品や建材メーカーにおける製品原料としての活用が挙げられます。

エコパウダーの活用事例

図4 エコパウダーの活用事例 出典:中国電力

ライトサンド、緑化基盤材や土壌改良材へ活用可能

上記の2製品(Hiビーズ、エコパウダー)のフライアッシュとは異なり、クリンカアッシュが利用された製品が「ライトサンド」となります。砂と比較し軽量で、砂に近い粒度分布と透水性を有しており、土工材および排水材として活用されています。

ライトサンドは、「山口県認定リサイクル製品」、「しまねグリーン製品」、「岡山県エコ製品」といったリサイクル製品の認定を持っています。また、「国土交通省 新技術情報提供システム(NETIS)」と「島根県 しまね・ハツ・建設ブランド[土木分野]」の登録を受けています。

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