日本の再エネ普及を左右したRPS制度の歴史を見る、2017年度から5年間で段階的に廃止

2016年06月10日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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6月7日に開催された新エネルギー小委員会によると、RPS制度は平成29年度から5年間で段階的に廃止されていく方針です。本コラムでは、再エネの普及を推進するため2003年に全面施行されたRPS制度のこれまでの歴史と、今後どのように廃止に向けて進んでいくのか概観していきます。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

日本では2003年から全面施行されたRPS制度

RPS制度とは、義務履行者(電力会社)に対して、定められた目標年までに一定割合以上の再生可能エネルギー発電の導入を義務付けるものです。

この制度により電力会社は,①再生可能エネルギーを自ら発電する,②他から再生可能エネルギーによる電力を購入し供給する③他から再生可能エネルギー電気相当量(Tradable Green Certificates:TGC)を購入する、この3つから効果的な手法を選び、義務発電量を達成することが求められます。

2017度から5年間で段階的に廃止

RPS制度は、2017年度から5年間で段階的に廃止される方針です。これに伴い、電気事業者による自主的・計画的なRPS設備の認定廃止を促すため、経過措置利用量(義務量)が年4.9億kWhずつ引き下げられる案が出ています。その結果、平成34年4月以降の義務量は0kWhとなります(図1)。

平成33年度までの各年度の義務量が確定するのは今年度中の予定です。RPS認定発電設備を持つ事業者の予見可能性を高める観点からも、原則として平成33年度までの義務量の変更は行わないとしています。

RPS制度の経過措置廃止までの間(平成29~33年度)、運転開始からの期間がFITによる買取期間を経過していないRPS認定設備については、FIT制度への移行が認められます。

義務量を持ち越すバンキング・ボローイングは引き続き認められます。しかし、平成34年度以降は義務量が0となるため、新エネルギー等電気相当量は平成34年度以降、実質的に無価値化することが予想されています。

RPS制度における今後5年間の義務量(案)

図1 RPS制度における今後5年間の義務量(案) 出典:資源エネルギー庁

RPSのはじまり、固定価格買取制度を退け施行される

RPSのはじまりは、2001年に経済産業省による総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会が、2010年の再生可能エネルギー導入目標量を一次エネルギー供給の約3%に相当する1910万kl(石油換算)とする報告書です。同年、新市場拡大措置検討小委員会が発足し、再生可能エネルギー発電普及に関する議論が進められました。その議論の結果が、2002年に成立する「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、平成14年6月7日法律第62号」(RPS法)へと繋がっていきました。

新市場拡大措置検討小委員会による審議は、イギリス、イタリア、オーストラリア、テキサス州といったRPS制度を採択した諸外国の状況と、ドイツの固定価格買取制度の双方を比較し、どちらが優れているかということに焦点が当てられ進められました。

第1回目の審議では、各国の制度内容や効果を比較するほか、審議の時点では世界一であった日本の太陽光発電がボランタリーな部分で賄われていたことに触れ、市民の意識を活用した手法について考察するべきとの意見が上がりました。

第2回目においては、ドイツの固定価格買取制度の果たした成果を評価する一方、RPS制度の活用を前提としたシュミレーションモデルの検討が進められています。

第3回目の審議の時点では、主に①効果の確実性、②コスト削減インセンティブ及び社会的費用負担、③費用負担の公平性の面で、固定価格買取制度よりRPS制度の方が日本に適しているという流れになりました。固定価格買取制度は、価格設定を発電事業者にとって十分魅力的である水準に設定すれば効果は大きいですが、固定価格を常に適切な水準に設定することは困難を伴うからです。仮に低すぎる水準に設定されれば、期待された導入効果が達成されない可能性が高く、再エネ普及の観点からリスクがあるとの理由です。RPS制度は、価格ではなく義務量の設定のため、再生可能エネルギーが期待通りに導入されないというリスクが少なく、効果の確実性の面で優れているといった指摘がありました。

また、RPS制度においては、市場原理が有効に機能した場合、電源選択のフレキシビリティが確保され、そのことが発電事業者間の競争を促し、コスト削減インセンティブが維持されるとしていました。このような理由などから日本ではRPS制度が採択されましたが、全量性の固定価格買取制度が始まった2012年の7月1日に廃止されました。

RPS制度が廃止された理由、きっかけは菅直人首相の退陣

東日本大震災への対応により当時の菅直人首相が、退陣の条件として固定価格買取制度の成立を掲げたことが、議論の場を活性化させ、そして制度成立のきっかけとなりました。

しかしながら、RPS制度から固定価格買取制度への移行に関しては過去にも議論が展開されており、2005年には総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会においてRPS法評価検討小委員会が開催されています。ここではRPS制度の再生可能エネルギー普及効果に疑問が投げかけられており、電源毎の特徴にあった個別の適正な取引価格を決める等、固定価格制度への改正も含めた抜本的な見直しが必要だとする意見が報告されています。

こういった地盤もあったので、①競争力のある再生可能エネルギー発電の開発が進まないことや、②諸外国を事例とした固定価格買取制度の高い再生可能エネルギー発電普及効果、③脱原発による将来的な代替エネルギーの模索などの条件が加わり、RPS制度が廃止され、2012年の7月1日から全量性の固定価格買取制度が始まりました。

日本のRPS制度、導入義務量が少ないとの指摘

日本は2003年からRPS制度を運用しており、年を追うに従いRPS制度が扱う再生可能エネルギーの発電量と割合が増加してきています。しかし普及速度は遅々としていると捉える見方もあり、制度開始から7年経過した2010年度の時点でも、RPS制度が普及に貢献した再生可能エネルギー発電は、総発電量の1%程度でした(表1)。

年度 風力 太陽光 水力 バイオマス 地熱 複合型 合計(MW) 総電力に対する割合(%)
2003 113 17 96 232 0.1 458 0.41
2004 164 40 104 251 0.03 0.1 560 0.49
2005 218 52 80 286 0.9 0.2 637 0.55
2006 245 61 107 326 1.2 0.4 743 0.64
2007 313 75 96 361 1 0.5 848 0.71
2008 349 87 110 357 0.65 0.5 904 0.79
2009 426 77 109 368 1.2 0.6 1013 0.91
2010 473 1.8 112 427 1.2 0.5 1170 1.01

表1 日本のRPS法施行状況について 出典:各年のRPS法施行状況報告書とエネルギー・経済統計要覧より作成

この状況はRPS制度が正しく機能しなかったことを意味しているのではなく、各事業者は義務を達成しておりました(表2)。これは、総発電量の1%程度の義務量が定められたことに起因し、再エネの普及が進まないという指摘に繋がりました。

年度 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
導入目標(MW) 374 410 437 506 692 852 1046 1257 1258

表2 日本のRPS制度の義務量 各年のRPS法施行状況報告書より作成

RPS制度のメリット・デメリット

ここでは、RPS制度のメリット・デメリットの概要をまとめます。RPS制度のメリットとしては、第1に、再生可能エネルギー電力が義務に従い、高い確実性で増加することが挙げられます。そのため、電力供給に占める再生可能エネルギー電力の量または割合を確保し、計画的に発電量を増加することが可能となります。

第2に、市場原理に従い再生可能エネルギー発電が効率的に導入される点が挙げられます 。これは、より低い費用で発電できる技術や発電設備が市場で評価されるためです。電力会社は、再エネ導入の義務を達成するために、できるだけ安い再エネの電源を探そうと模索します。そのため、最も収益性の高い技術や地域から開発が進むこととなります。

第3に、再生可能エネルギー発電の地域性を克服できる点が挙げられます。再生可能エネルギーは地域条件によってパフォーマンスが大きく左右されます。そのため、条件の悪い地域であれば再生可能エネルギー発電の普及に参画することが困難となりますが、その点をRPS制度は環境価値の売買という形で解決できます。原理としては、電力とTGCの売買により市場は均衡化され、全体として最も利益の出る形に誘導されていくので、あらゆる電気事業者が再生可能エネルギー発電の普及に参入することが可能となります。

一方で、RPS制度のデメリットとしては、第1に導入目標量が控えめに設定される傾向がある部分です。その理由としては、量産効果と技術開発による価格低減効果を予め予測することは難しく、投資コストと進捗ペースなどといった経済主体の行動を正確に予測することはできないからです。そうすると、現行の導入量と技術水準を基礎に導入目標が算出され、低い目標値として表れやすくなります。また、義務対象者は導入目標量を達成すると、再生可能エネルギー設備の新規設置インセンティブを失うため、制度それ自体が再生可能エネルギー発電の普及を規制してしまう危険性もはらんでいます。

第2に、市場機能に委ねたRPS制度では、競争力がなく成熟していない技術の開発が進みづらい点が挙げられます。同時に、外部不経済の観点からも、騒音問題などの地域社会・周辺環境に与える影響が軽視される可能性もあります。

第3に、日本においては東日本と西日本で周波数が異なるため、電力の売買に制限がかかる点が挙げられます。しかし、TGCによる売買である程度は代替することが可能となります。

第4に、再生可能エネルギー発電の市場価値は変動するため、価格が固定されないRPS制度では、将来的な事業リスクの算出が困難になる点が挙げられます。特に規模の大きいメガソーラーなどで将来的なリスクが不透明であることは、新規の参入を阻害する要因となり得ます。

廃止された今なお効果を持つRPS制度

RPS制度は、固定価格買取制度の施行時に廃止されましたが、RPS制度の下で設置された認定設備の投資回収ができなくなる恐れがあったこと等により、「当分の間、なお、その効力を有する」とされていました。そのため、廃止された現在でも効力を持っています。

しかし、固定価格買取制度の開始後、 RPS認定設備の多くはFITに移行しました。経過措置中の「経過措置利用量」は、認定設備の廃止の状況等にあわせて毎年減少しています。また、RPS制度の利用目標量はFIT導入前の平成23年時点で平成26年度に173.3億kWhとされていましたが、平成26年度のFITによる買取電力量は286.0億kWhと大幅に超過しています(図2)。こうした背景もあり、RPS制度の存在意義が薄くなり、5年間で段階的に廃止していくといった流れになりました。

RPS制度の基準利用量とFITの買取電力量の推移

図2 RPS制度の基準利用量とFITの買取電力量の推移 出典:資源エネルギー庁

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