環境NGO、再エネ重視の新電力を紹介・応援、グリーン電力求める声に応じる

2016年05月23日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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電力自由化に伴い誰でも電力会社を選択できるようになった今、グリーン電力を求める消費者に正しく情報を伝える必要性が高まっています。そこで、環境NGOであるFoE Japanの吉田明子氏に、再エネ重視の企業を応援する「パワーシフト・キャンペーン」について話を聞きます。

電力自由化により個人の嗜好に合わせた電力会社を選択できる時代に

2016年4月から、電力小売りの全面自由化が始まり、誰でも電力会社を選択できる時代に突入しました。この自由化により、電力を利用する全ての消費者は、電気料金や再エネの割合、企業のCSR活動など、あらゆる要素を吟味し、各々の嗜好や好みに合わせて電力会社を選ぶことが可能となります。

これまで、再生可能エネルギーの普及を応援したい場合であっても、簡単には行動に移すことが出来ませんでした。太陽光発電の設置など手段はありますが、高額な費用が必要など手軽さに欠けます。しかし、電力自由化により、これまでは電力会社を選べなかった一般家庭や小さな工場などが、再エネの割合などを考慮して企業選択することが可能となりました。電気利用の手続きという、現代社会においては一般的な契約の中で再エネ普及を後押しできます。

ただし、電力自由化の制度が始まって間もないこともあり、電力会社の選択が再エネを普及するとの認知がまだまだ低いように考えられます。グリーン電力を促進したい消費者がいても、やり方が分からないといったケースも想定されます。そのため、再エネを普及したいと考えている消費者が、再エネの普及に正しくアプローチできる環境を整えることが重要です。そこで、世界にネットワークをもつ環境NGO「FoE Japan」の吉田氏に、再エネ重視の新電力を支援する活動、「パワーシフト・キャンペーン」について話を聞きます。

再エネ重視の新電力を紹介・応援する「パワーシフト・キャンペーン」

パワーシフト・キャンペーンとは、再生可能エネルギーによる電力供給を重視している新電力企業を紹介・応援する運動です。FoE Japanが運営事務局となり、活動を展開しています。

FoE Japan パワーシフト・キャンペーン事務局の吉田明子氏

FoE Japan パワーシフト・キャンペーン事務局の吉田明子氏

FoE Japanに所属し、パワーシフト・キャンペーンを担当する吉田氏は、「現在、電気の切り替えにおいては価格が重視される傾向にあり、再エネ重視の電力会社を見つける手段が少ない。そのため、多少高い料金を支払っても再エネを普及したい層が、そのニーズに見合った電力会社に辿り着けないケースが考えられる。

再エネ重視の企業に対する導線が弱いままでは、再エネを重視する消費者と新電力企業の双方にとっての機会損失に繋がる。こうした機会損失の小さな積み重ねが環境問題に影響し、消費者の意図しないところで、石炭火力や原子力の推進に繋がる可能性もある。パワーシフト・キャンペーンにおいては、こうした状況を改善するため日々活動を展開している。」と述べます。

8兆円ともいわれる電力自由化(低圧)市場において、新電力各社は自由競争の中で自社の料金プランを顧客にアピールできます。市場経済の基本に基づき、料金プランの商品性を説明する際には、その説明が虚偽でない限り、ビジネス上の工夫や智恵に基づいて自由に行えます。そのため、ニュートラルな土壌で新電力各社は自社プランをアピールできるのですが、現状では宣伝力などの観点から既存の電力会社や資本のある大手企業に選択が集中しています。

新電力の中には、人目に触れる機会が少なくとも、再エネを重視する企業があります。パワーシフト・キャンペーンは、そうした宣伝力などの面で消費者選択からこぼれ落ちた企業をすくい上げ、消費者選択による再生可能エネルギー社会へのシフトを目指す運動として2015年3月に発足しました(図1)。

パワーシフト・キャンペーンの寄与する役割

図1 パワーシフト・キャンペーンの寄与する役割 出典:FoE Japan

パワーシフト・キャンペーンによる応援、企業努力も考慮

パワーシフト・キャンペーンでは、5つの基準を設け、その方向で鋭意努力している電力会社を「パワーシフトな電力会社」として応援しています。市民キャンペーンとして電力会社の姿勢を判断、ウェブサイトやイベントなどで紹介しています。

5つの基準においては、単純に現状の再エネ導入割合だけを見るのではなく、企業が持つビジョンなど将来性や努力を考慮しています。現状では再エネ自体の絶対量が少ないため調達が難しいといった側面がありますが、そうした厳しい状況の中でも再エネ促進の準備を進める新電力を応援しています。電力の消費者は、「パワーシフトな電力会社」を見るだけで、特別な知識がなくても再エネ普及の努力をしている企業を知ることができます。

パワーシフト・キャンペーンが重視する点
  1. 電源構成や環境負荷などの情報を一般消費者にわかりやすく開示していること
  2. 再生可能エネルギーの発電設備(FITをふくむ)からの調達を中心とすること
  3. 原子力発電所や石炭火力発電所からの調達はしないこと(常時バックアップ分は除く)
  4. 地域や市民による再生可能エネルギー発電設備を重視している
  5. 大手電力会社と資本関係がないこと(子会社や主要株主でない)

上記における重視する5つの点は、新電力企業がただちに理想的な形で再エネ電源を提供することを求めているわけではありません。例えば、評価基準にもあるFIT電源に関しては、再エネ設置の費用を国民全員が負担しており、電源の特性としては環境価値を持たないとされています。自社の費用負担で再エネ設備を設置するケースと分けるため、新電力企業が電源構成を開示する際にも、注記付きで「再エネ(FIT)」と表現するルールがあります。そのため、より厳密に重視する点を設ける場合、自社の費用負担における再エネ電源のみを考慮することが望ましいです。

一方で、資本の少ない企業が、最初から大規模な再エネ設備を持つなど、理想的な形で事業運営することは非常に困難です。そのため、将来における可能性を考慮して「パワーシフトな電力会社」が選ばれている点は、消費者として正しく認識する必要があります。

アンケート調査において、半数近くが「多少高くても再エネ電気を選びたい」

パワーシフト・キャンペーンでは、イベントや勉強会、ウェブサイト上で「パワーシフト宣言(自然エネルギー買いたい宣言)」を集めています。2016年3月末に中間とりまとめとして3600人の声を集計・発表しました。

集計した数値を見ると、回答者の約半数が「今より少々電気代が高くても再エネ電源を選びたい」との結果となりました(図2)。再エネ電源に関心のある層や、それに付随する市場は一定数あると想定され、パワーシフト・キャンペーンではそういった市場の拡大を後押しします。

電力切り替えに対する意識調査の結果

図2 電力切り替えに対する意識調査の結果 出典:FoE Japan

14社を「パワーシフトな電力会社」として紹介、今後も企業数は増える見込み

「パワーシフトな電力会社」は14社が登録(2016年5月19日時点)されています(図3)。これら登録された新電力は、再エネを重視した電力供給を目指して準備している企業となります。FoE Japanの事務局も「パワーシフトな電力会社」である「みんな電力」から電気を購入し、6月には切り替える予定です。自ら先陣を切り、再エネ電源の普及を推進しています。

パワーシフトな電力会社一覧(2016年5月19日時点)

図3 パワーシフトな電力会社一覧(2016年5月19日時点) 出典:FoE Japan

政策提言やイベントの実施も

パワーシフト・キャンペーンにおいては、新電力会社をウェブページで紹介するだけではなく、政策提言やイベント・勉強会も実施していきます。

政策提言に関しては、再生可能エネルギーに関するこれまでの豊富な経験をいかし、意見書の提出などを実施する予定です。新電力会社とも連携、多方面の意見を取り入れた提言を実施するとしています。また、イベントや勉強会も定期的に開催し、市民への周知や理解を深めていく予定です(図4)。

パワーシフト・キャンペーンにおける今後の活動見通し

図4 パワーシフト・キャンペーンにおける今後の活動見通し 出典:FoE Japan

ラッシュジャパンやパタゴニアが支援

オーガニックな素材を使った石鹸などを販売する「ラッシュジャパン」や、環境に配慮したアウトドア用品などを取り扱う「パタゴニア」が、パワーシフト・キャンペーンを支援しています。ラッシュジャパンは店頭での呼びかけやチラシの配布などを通じて支援、パタゴニアは共同で勉強会を開催し再エネへの乗り換えを呼び掛けています(図5)。

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