ガス自由化の流れを見る、マンションの一括受ガスや地域間販売の概要

2016年05月18日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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本コラムでは、2017年4月から開始予定の都市ガス小売りの全面自由化について、現時点における議論の流れをまとめます。マンションにおける一括受ガスやパンケーキ問題などについて、現在進められている議論の概要を見ていきます。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

マンションなどにおける一括受ガスの可能性

一括受ガスとは、例えばマンションなどにおいて一括でガスを購入し、各戸に分配するシステムです(図1)。価格面でメリットを打ち出せる可能性があります。この一括受ガスと似ているシステムとして、電気ではマンションなどにおける一括受電があります。一括受電とは、一括受電事業者が受電設備(変圧器)を保有・管理し、電力会社から高圧で受電した電気を低圧に変圧した上で、マンションの各戸に対して電気を供給する形態のことです。現在、電気における一括受電は認められておりますが、一括受ガスについては、認められていません。この一括受ガスについて、ガス自由化後の可能性について見ていきたいと思います。

マンションに対するガスの供給については、低圧導管によって行われることが一般的です。この低圧導管の場合、一括受ガスは認められない方針です。低圧導管では、敷地外の低圧導管から敷地内の内管を通じて直接マンションの各戸に対してガスの供給がなされます。この場合、仮に一括受ガス事業者が存在したとしても、設備の保有・管理を行っておらず、ガスの供給を受けているという実態(受ガス実態)のないケースが可能性としてあるからです。

敷地外の導管が高中圧導管であり、かつ、一括受ガス事業者が変圧器を保有・管理し、変圧した上でマンションの各戸に対してガスを受け渡す場合ですが、これも現時点では許容されない流れです。理由としては大きく3つあります。

一つ目は、ガス事業法上、一括受ガス事業者にはガスメーターを設置する義務はなく、仮にマンションの各戸に設置したとしても、当該ガスメーターはガス工作物ではないため、ガス事業法上の保安規制を及ぼすことができないからです。そのため、現行制度下では、需要家の安全を制度的措置をもって担保することができないとされています。

二つ目は、ガス事業法上、一括受ガス事業者が保有するガバナー(変圧器)については、一般ガス導管事業者に保安義務があるからです。このため、このガバナーの実質的な維持・管理を行っているのは一般ガス導管事業者のため、一括受ガス事業者に受ガス実態があるとは言い難いからです。

三つ目は、一括受ガスが仮に実現した場合、マンション各戸の需要家がガスの供給者を選択する際などに制約を受けることが想定されるからです。こうした理由から、一括受ガスは許容されない流れとなっております。

上述のような意見の一方で、ガスも電気と同様に、一括受ガスを実現するべきとの意見もあります。例えば、電力とガスのセットでの契約が可能になるなど、一括受ガスは消費者にとって十分有意義な選択肢となることが指摘されています。こうした流れもあり、小売全面自由化後の需要家ニーズも踏まえつつ、引き続き一括受ガスの実現可能性について検討される方針です。

小売供給に係る一括受ガスのイメージ

図1 小売供給に係る一括受ガスのイメージ 出典:経済産業省

遠くの需要地ほど価格が上乗せるパンケーキ問題は解消される見込み

パンケーキ問題とは、供給区域をまたぐごとに託送料金が課金される仕組みのことです(図2)。ガス製造設備が需要地から遠いほど不利になるので、ガス小売事業者間の公平な競争を阻害する可能性があります。このパンケーキ問題に関しては、電気と同様に解決される見込みです。

パンケーキ問題のイメージ

図2 パンケーキ問題のイメージ 出典:経済産業省

かつての電気事業制度においては、遠方であるほど振替供給料金が上乗せされる仕組みになっており、パンケーキ問題が発生していました。この問題により、電気の広域的な流通や、小売事業者間の競争が阻害されておりました。

そのため、平成17年4月に上記の仕組みは改められ、パンケーキが解消されました。振替供給料金については、特定負担から一般負担となり、当該振替供給に係る新電力のみが負担するのではなく、供給区域内の全ての需要家が等しく負担することとなりました(図3)。

電気事業制度におけるパンケーキ解消のイメージ

図3 電気事業制度におけるパンケーキ解消のイメージ 出典:経済産業省

小売全面自由化後に需要家の利益を最大化するためには、ガス小売り事業者間の競争活性化や、需要家選択肢の拡大などが重要です。そのため、ガスの広域的な流通促進のためにも、パンケーキ問題を解消する必要が出てきます。こういった背景もあり、ガス事業におけるパンケーキ問題については、卸託送料金が一般負担化され、電気事業制度と同様に解消される見込みです(図4)。

パンケーキ解消後のイメージ(ガス⼩売事業者関係)

図4 パンケーキ解消後のイメージ(ガス⼩売事業者関係) 出典:経済産業省

二重導管による顧客開拓は、3年間でネットワーク需要の4.5%まで

二重導管とは、新規参入者などが自らのガス導管を使うことにより、複数の導管が設置されることです。ただし、二重で導管をガス各社が運用することは、全体で見ると非効率となる可能性があります。例えば、ガス導管事業を制限なく認めれば、既存のガス導管網を流れるガスが減少して運用効率が低下し、その結果、既存導管網の利用コストが上昇し、それが利用者に転嫁されるおそれなどがあります。

そのため、既存ガス導管網の効率的運用の確保という観点で、二重導管には規制が課される見込みです。この規制は、これまではネットワーク需要の平均伸び率により、年間でネットワーク需要の0.5%までが二重導管の新規開拓として可能とされていました。しかし、電力業界や有識者から0.5%は少なすぎるといった意見もあり、3月31日のガスシステム改革小委員会において、原則として自由化後の3年間でネットワーク需要の4.5%を新規獲得できると上方修正されました。

この二重導管規制については、需要家の利益を阻害しない範囲内で、大口需要家の獲得競争を促進することが求められています。そうすることにより、ガス小売事業者の効率化を進展させ、さらに小口需要家に対する低廉なガス供給が実現、そして日本の産業競争力を強化することが期待できます(図5)。

二重導管規制の抜本的見直しによる効果のイメージ

図5 二重導管規制の抜本的見直しによる効果のイメージ 出典:経済産業省

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