九州で大量に発生する焼酎かすを利用した充電池を開発、廃棄に悩む業界に貢献

2016年05月16日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

九州で大量に発生する焼酎かすを利用した充電池を開発、廃棄に悩む業界に貢献の写真

5月11日、福岡工業大学(福岡市東区)工学部電気工学科の田島研究室は、焼酎製造時に生じる「粕(かす)」を活用した充電池を開発したと発表しました。九州で大量に発生する焼酎かすの新たな活用法を開拓したことで、地域の環境保護や産業の活性化が期待されます。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

焼酎かすの充電池で地域の環境保護や産業の活性化

今回、福岡工業大学の田島研究室が開発した充電池は、焼酎かすを利用したものとなります(図1)。焼酎かすは、焼酎を製造するときに得られる蒸留後の残渣(焼酎かす)であり、その処理が社会的な問題となっています。2007年4月からは、ロンドン条約を背景とする改正海洋汚染防止法により、焼酎粕の海洋投棄が原則全面禁止になり、陸上処理が原則となりました。

今回の充電池は、焼酎かすの廃棄費用に悩む九州の焼酎業界への貢献が期待されます。また、本来廃棄するものを利用するため、低コストであり、かつ放充電の際に劣化が少なく長期間の使用も可能な特徴を持ちます。九州で大量に発生する焼酎かすの新たな活用法を開拓したことで、地域の環境保護や産業の活性化も期待されています。

焼酎粕から充電池ができるまで

図1 焼酎粕から充電池ができるまで 出典:福岡工業大学

焼酎かすから、材料となる活性炭の作製と電気二重層キャパシタへの応用

今回の充電池は「電気二重層キャパシタ」というタイプのものです。「電気二重層キャパシタ」とは、活性炭の表面にある微細な隙間に多数のイオンが付着したり放出されたりする現象を利用した充電池のことです(図2)。

通常の充電池と比較して、貯められる電気の量は劣るものの、短時間で充放電する瞬発力に優れており、繰り返しの使用に非常に強いという特徴があります。そういった特徴があるので、ハイブリッド自動車のブレーキ時におけるエネルギーを急速に蓄えたり、発進・加速時に大きな電力を供給したりする用途に適しています。

電気二重層キャパシタの原理

図2 電気二重層キャパシタの原理 出典:福岡工業大学

今回の開発では、焼酎工場から排出される焼酎かすから、材料となる活性炭の作製と電気二重層キャパシタへの応用に成功しました(図3)。製法の工夫により、従来から多く用いられてきたヤシ殻由来の活性炭と比較して、イオンを表面に保持する能力が約13%向上しました。また、その活性炭を電気二重層キャパシタの電極として応用し、貯めることができる電気の量も全体として約20%向上させています。

焼酎粕から作製されたカーボン

図3 焼酎粕から作製されたカーボン 出典:福岡工業大学

焼酎の種類によって蓄えられる電気の量が異なる

以下にて、今回の充電池について特徴を纏めます。まず、大きな特徴として焼酎の種類によって蓄えられる電気の量が異なる点が挙げられます。そのため、様々な種類の焼酎を試すことにより、改良の余地が大きいと考えられます。なお、焼酎かすは紅乙女酒造(福岡県)が提供しており、実用化に向けて今後も協力して研究を進めていくとしています。

そのほか、廃棄物を使用し、レアメタル等を用いないため、製造コストは低く抑えられることが期待できます。加えて、充電・放電の際に劣化が少なく長期間使用できます。

また、余った電気を無駄なく回収したり、一度にたくさんの電気が必要となる用途に適しています。将来的には、何時間もかかっていた充電を一瞬でできるようになる可能性があり、電気自動車、小型モバイル機器、家庭用の充電池などへの実用化が期待できます。

今後は、多量の焼酎かすから一度に活性炭を作成するためのスケールアップを実現し、焼酎かすの廃棄費用に悩む九州の焼酎業界への貢献を目指すとしています。また、充電池としての能力を向上させ、災害時などの非常用電源として活用できるような研究開発が進められる予定です。

はてなブックマークGoogle+でシェア

執筆者情報

新電力ネット運営事務局の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

業界初、エネルギーハーベスティングによるIoT技術を活用したスマート農業の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年05月17日

新電力ネット運営事務局

業界初、エネルギーハーベスティングによるIoT技術を活用したスマート農業

4月25日、ふくしま未来農業協同組合は、NTT東日本の圃場センシングソリューションを導入し、4月より運用を開始したと発表しました。果樹の防霜対策を目的としており、業界初のエネルギーハーベスティングによるスマート農業の推進事例となります。

家庭用の蓄電池を「ブロックチェーン」で統合、再エネの出力制御を抑えるプロジェクト始動の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年05月08日

新電力ネット運営事務局

家庭用の蓄電池を「ブロックチェーン」で統合、再エネの出力制御を抑えるプロジェクト始動

5月2日、欧州の大手送電事業者TenneT社とドイツの蓄電池開発などを手がけるsonnen社は、再エネの出力変動が及ぼす送電網への影響を抑える実証プロジェクトを共同で開始すると発表しました。複数の家庭用蓄電池を「ブロックチェーン」で制御することで、再エネの出力制御を軽減することが期待されます。

滑走路いらず、垂直離着陸ができる世界で初めての電動飛行機「Lilium Jet」が飛行成功の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年04月24日

新電力ネット運営事務局

滑走路いらず、垂直離着陸ができる世界で初めての電動飛行機「Lilium Jet」が飛行成功

4月20日、Liliumはドイツのバイエルン州において、垂直離着陸ができる世界で初めての電動飛行機「Lilium Jet」の飛行試験が成功したと発表しました。電動のため環境や騒音への影響が少なく、滑走路も必要でないことから、都市部での利用可能性も期待できます。

ほぼ100%の変換効率へ、省エネかつ長寿命なディスプレイ、ケンブリッジ大学が発見の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年04月19日

新電力ネット運営事務局

ほぼ100%の変換効率へ、省エネかつ長寿命なディスプレイ、ケンブリッジ大学が発見

3月30日、ケンブリッジ大学はイースト・アングリア大学、東フィンランド大学とのチームにおいて、変換効率がほぼ100%のディスプレイを開発したと発表しました。分子を回転させるこの新技術により、これまでより明るく・省エネでかつ長寿命なポテンシャルを実現します。

電気飛行機が世界最速の337.50km/hを達成、100人を1000km運ぶ旅客機に活用予定の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2017年04月17日

新電力ネット運営事務局

電気飛行機が世界最速の337.50km/hを達成、100人を1000km運ぶ旅客機に活用予定

4月4日、シーメンスは電気飛行機「330LE」のプロトタイプにおいて、世界最高記録である340km/hを達成したと発表しました。重量わずか50kgのモーターで260キロワットの出力を実現し、グライダーを76秒で600メートルまで引き上げる牽引力もあります。