2015年度の10電力による電力販売量は7971億kWh、5年連続で需要減少

2016年05月06日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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4月28日、電気事業連合会は電力10社における2015年度分の電力需要実績について確報を発表しました。2015年度の電力需要実績は 7971億kWhであり、5年連続で減少が続いています。このコラムでは、電力需要の減少理由について見ていきます。

2015年度の10電力による電力販売

2015年度の電力需要は、10社販売電力量合計で7971億kWhであり、2014年度と比較して3.2%減少しました(図1)。特定規模など全ての分類において前年度の需要を下回っており、全体の販売電力量合計としても、今回の2015年度で5年連続の減少となります。

用途別電力量 対前年伸び率(10社計)

図1 用途別電力量 対前年伸び率(10社計) 出典:電気事業連合会

唯一沖縄電力のみ販売量増加、その他9電力は減少

電力会社別に販売電力量を見ていくと、沖縄電力では前年度から増加しているのに対し、その他9電力会社は減少しております。9電力会社の内、最も減少したのは関西電力であり、前年比5.2%の減少となりました。反対に、北陸電力は減少割合が少なく、1.3%の減少にとどまりました(図2)。

産業用需要の大口電力については、10社計2559.3億kWhであり、2.8%減と2年連続で前年実績を下回りました。繊維・紙・パルプ、化学、窯業・土石 、鉄鋼、非鉄金属、機械の全ての業種において、前年度の電力販売量を下回る結果となっています。

10電力会社の電力需要 対前年伸び率

図2 10電力会社の電力需要 対前年伸び率 出典:電気事業連合会

10電力会社の販売量減少、省エネや新電力の切り替えなどが影響の可能性

10電力会社が年々と電力販売量を減らしている原因としては様々ありますが、省エネの推進や新電力の切り替えなどが影響していると考えられます。下記にて、その概要を見ていきたいと思います。

電力の需要と関係するGDPは増加傾向

電力の需要には、国内総生産であるGDPや、鉱工業生産指数であるIIPなどの指標が関わってきます。例えばGDPが縮小すると、電力需要も少なくなる可能性が高まります。

下記の図は東京電力におけるGDPと電力需要を表したものですが、概ねGDPが成長すると電力需要も伸びていることが分かります。しかし、近年においてはGDPの伸びにも関わらず、電力販売が伸び悩んでいる現状にあります(図3)。近年10電力全体としても電力販売の減少が続いている理由は、GDPとは別に要因があると考えられます。

東京電力におけるGDPと電力量

図3 東京電力におけるGDPと電力量 出典:東京電力

2015年の冬季、過半数の需要家が節電を実施

電力需給検証小委員会では、停電などの事態をおこさないため、将来における電力の供給力や需要を把握してます。その中で実施された節電に関するアンケートは、2015年度の冬季における節電実施の内容を約17000のサンプルを集計したものです。

アンケートの集計結果によると、例えば大口需要家に関しては約9割が節電を実施したと回答しました(図4)。家庭部門においても、約6割が節電を実施したと回答しています。節電を実施した理由は、電気料金の削減が最も割合が高く、家庭部門では8割ほどの回答数となりました。

2015年冬季における節電実施

図4 2015年冬季における節電実施 出典:電力需給検証小委員会

特別高圧・高圧の新電力シェアも増加傾向

特別高圧や高圧における新電力のシェアも増加してきており、例えば2015年3月には7%ほどであった高圧のシェアは、2016年2月には10.7%ほどになっており、約1年で約1.5倍以上に成長しています。実際に電力供給の実績がある企業に関しても、昨年3月は71社であったのに対し、今年の2月には128社へと増加しました(図5)。競争相手である新電力の存在感が増したことにより、10電力会社の販売電力量にも影響していると考えられます。

2016年4月からは、一般家庭などにも新電力が参入します。電力広域的運営推進機関によると、4月22日時点で約74万件の切り替えが実施されています。今回、電気事業連合会が発表した数値は2015年度のものなので、家庭部門の直接的な影響はまだ数値に表れていません、しかし今後、10電力会社の電力販売量減少の要因になると考えられます。

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