都市ガスの安定供給評価、南海トラフ地震でも重大被害は発生しない想定

2016年04月27日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

都市ガスの安定供給評価、南海トラフ地震でも重大被害は発生しない想定の写真

4月22日、ガスシステム改革小委員会が開催され、震災におけるガス供給安定性の評価について議論されました。これまでに発生した地震におけるガス関連設備の被害などを整理し、将来大地震が発生した際の影響を評価する内容です。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

ガス導管網の敷設状況、約7割の世帯に供給

都市ガス導管網が敷設されている一般ガス事業者の供給区域は国土全体の6%弱です。供給区域内世帯数では全国世帯数の約67%となります。

東京~­名古屋間といった太平洋岸など、未だ接続されていない地域はありますが、都市ガスは国民生活に欠くことの出来ないライフラインであり、経済産業を支える主要なエネルギーの一つとして重要な役割を担っています。こうした都市ガスの震災時における安定供給について、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスといった大手3社の製造設備・供給設備における評価を下記にてまとめます。

都市ガス導管網の整備状況

図1 都市ガス導管網の整備状況 出典:ガスシステム改革小委員会

製造設備、バックアップも活用し安定的な製造能力を確保

ガス製造設備に対する耐性評価にあたっては、内閣府中央防災会議が想定する、南海トラフ巨大地震(地震動5ケース、津波11ケース)及び首都直下地震(M7クラス19ケース+M8クラス大正関東型)のうち、最も過酷な被害となる想定ケースが用いられています。

南海トラフ巨大地震に対しては、全ての工場において最も過酷なケースで震度6強以下となります。東日本大震災において震度6強を観測した仙台市内の工場の実績等から、評価対象設備は十分な耐性を有しているとの評価になりました。

首都直下地震に対しては、最も過酷なケースで震度7の工場が1箇所、震度6強の工場が2箇所となります(表1)。震度6強の工場については、上述と同様、評価対象設備は十分な耐性を有していると考えられますが、震度7の工場(1箇所)についての耐性は、実績からは不明です。今後、高圧ガス保安法において巨大地震を踏まえた耐震基準の見直し検討など、耐性の評価を進める方針です。なお、震度7の工場が仮に製造停止した場合でも、残りの工場(2箇所)からのバックアップにより、概ね製造能力を確保することは可能となります。

  事業者 各工場の震度階([ ]内は工場名)
南海トラフ巨大地震 東京ガス 震度5強[根岸、扇島、袖ヶ浦]
東邦ガス 震度6強[知多LNG共同、知多緑浜、四日市]
大阪ガス 震度6強[姫路]、震度6弱[泉北第一、泉北第二]
首都直下地震 東京ガス 震度7[根岸]、震度6強[扇島、袖ヶ浦]

表1 製造設備に対する地震影響 出典:ガスシステム改革小委員会

ガス導管などの供給設備、震度7の地震動を受けるも十分な耐久を有する評価

南海トラフ巨大地震または首都直下地震に対して、各社とも高圧ガス導管、球形ガスホルダーとも、一部の設備については震度7の地震動を受けます。しかし、阪神・淡路大震災において震度7を観測したエリアの中圧ガス導管、球形ガスホルダーの実績等 から、評価対象の設備は十分な耐性を有していると評価されています(表2)。

  事業者 設備 震度階([ ]内は数量)
南海トラフ 巨大地震 東京ガス 高圧ガス導管 震度6弱以下[約920km]
球形ガスホルダー 震度6弱以下[38基]
東邦ガス 高圧ガス導管 震度7[約40km]
震度6強[約140km]
震度6弱以下[約80km]
球形ガスホルダー 震度7[5基]
震度6強[6基]
震度6弱以下[2基]
大阪ガス 高圧ガス導管 震度6強[約50km]
震度6弱以下[約680km]
球形ガスホルダー 震度7[2基]
震度6強[6基]
震度6弱以下[22基]
首都直下地震 東京ガス 高圧ガス導管 震度7[約20km]
震度6強[約240km]
震度6弱以下[約660km]
球形ガスホルダー 震度7[4基]
震度6強[9基]
震度6弱以下[25基]

表2 供給設備に対する地震影響 出典:ガスシステム改革小委員会

津波の影響、バックアップにより安定供給を確保

南海トラフ巨大地震または首都直下地震に対して、全ての工場において、浸水深さレベルが1m未満となります。東日本大震災において津波浸水被害を受けた5箇所の工場の実績等から、評価対象設備は十分な耐性を有しているとの評価です。

ただし、南海トラフ巨大地震に対して浸水深さ 0.7~0.9m となる1箇所の工場においては、設備自体は健全であるものの電気設備等の浸水で製造停止し、製造再開に2~3ヶ月程度の復旧期間を要する可能性があります。なお、浸水により製造停止した場合においても、残りの工場(2箇所)からのバックアップにより製造能力を確保することは可能となります(表3)。

  事業者 各工場の浸水深さ([ ]内は工場名)
南海トラフ巨大地震 東京ガス 浸水無し[根岸、扇島、袖ヶ浦]
東邦ガス 浸水0.2m[四⽇市]、浸水無し[知多LNG共同、知 多緑浜]
大阪ガス 浸水0.7〜0.9m[泉北第一]、浸水0.4m[泉北第二]、浸水無し[姫路]
首都直下地震 東京ガス 浸水無し[根岸、扇島、袖ヶ浦]

表3 製造設備に対する津波影響 出典:ガスシステム改革小委員会

津波の影響、ガス供給設備は十分な耐性を有している評価

南海トラフ巨大地震または首都直下地震に対して、各社とも球形ガスホルダーの一部が浸水します。ただし、浸水深さレベルは最大のもので2.2mであり、東日本大震災において約3~4m浸水した仙台市内の球形ガスホルダーの実績等から、評価対象設備は十分な耐性を有しているとの評価です(表4)。

  事業者 設備 浸水深さ[浸水想定/総設備数]
南海トラフ巨大地震 東京ガス 球形ガスホルダー 浸水無し [0基/38基]
東邦ガス 球形ガスホルダー 最大2.2m [5基/13基]
大阪ガス 球形ガスホルダー 最大1.0m [2基/30基]
首都直下地震 東京ガス 球形ガスホルダー 最大0.6m [8基/38基]

表4 供給設備に対する津波影響 出典:ガスシステム改革小委員会

東日本大震災の4倍の復旧要員確保により、約6週間での復旧想定

南海トラフ巨大地震や首都直下地震では、東日本大震災の実績である約10万人/日と比較し、約4倍である40万人/日ほどの復旧要員により、6週間程度での復旧が想定されています。復旧対象戸数は、東日本大震災で約46万戸であったのに対し、南海トラフ大地震では約180万戸、首都直下地震では160万戸となります(表5)。

復旧要員の確保

復旧を応援する側の事業者は、通常業務を行う中で応援要員を捻出するため、大勢の復旧要員を確保することは難しくなります。一方、被災した側の事業者は、通常業務が大幅に減るので、その分を復旧作業要員として割り当てることができます。

南海トラフ地震および首都直下地震における被災事業者には、大手ガス事業者が含まれることになるので、通常業務を担当する多くの要員を復旧要員として確保可能となります。

  東日本大震災 南海トラフ巨大地震 首都直下地震
復旧対象戸数 約 463,000 戸 約 180 万戸 約 160 万戸
延べ復旧要員数 約 10 万人・日 約 41 万人・日 約 42 万人・日

表5 復旧対象戸数と復旧要員数 出典:ガス安全小委員会

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