石炭火力発電の最高峰、IGFCの実現に向けて一歩前進

2016年04月06日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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4月4日、NEDOはCO2分離・回収型酸素吹IGCCの実証事業を今年度から開始したと発表しました。石炭火力発電から排出されるCO2を大幅に削減することが可能であり、IGFCの実現にも繋げる内容となります。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

CO2分離・回収設備を付設でCO2を90%回収

今回の実証事業は、石炭火力で最高峰の技術となるIGFCに展開可能である酸素吹IGCCに関するものです。酸素吹IGCC実証試験設備にCO2分離・回収設備を付設することにより、CO2を90%回収しながらも、現状の微粉炭火力と同等レベルの送電端効率40%の達成を目指す内容となります(図1)。

CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電の概要

図1 CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電の概要 出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

補助金による実証事業の一環、始まりは平成24年度

今回の発表内容は、「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金」の一環です。内容としては、石炭火力としては最も効率が高いと考えられているIGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)とCO2分離回収を組合せた革新的ゼロエミッション火力発電の実現を目指し、基幹技術である酸素吹石炭ガス化技術(酸素吹IGCC)に関する実証試験を行うものです(図2)。

石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金の概要

図2 石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金の概要 出典:評価専門調査会

石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業は、平成24年から始まっており、平成33年度に完了する予定となっております。マイルストーン毎に事業が区分けされており、下記の3段階にて実証が進んでいく予定です。予算についても、第2段階までの予定が立てられており、第1段階では事業費ベースで約900億円、第2段階では約300億円となります(図3)。

第1段階(酸素吹IGCC実証):平成24年度 ~ 平成30年度

IGFCの基幹技術である酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証試験設備(17万kW)を建設し、性能(発電効率、環境性能)・運用性(起動停止時間、負荷変化率等)・経済性・信頼性に係る実証を行う。

第2段階(CO2分離・回収型IGCC実証):平成28年度 ~ 平成32年度

第1段階で構築したIGCC実証試験設備にCO2分離・回収設備を追設し、石炭火力発電システムとしての性能・運用性・経済性・環境性に係る実証を行う。

第3段階(CO2分離・回収型IGFC実証):平成30年度 ~ 平成33年度

第2段階で構築したCO2分離・回収IGCCシステムに燃料電池を組み込み、石炭ガス化ガスの燃料電池への利用可能性を確認し、最適な石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)システムの実証を行う。

石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金の予算総額

図3 石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金の年度別予算 出典:資源エネルギー庁

今年度から開始した第2段階では、CO2分離・回収型酸素吹IGCCの石炭火力システムとしての性能や運用性、信頼性、経済性についての実証となります。酸素吹IGCCにおいて、CO2回収時のエネルギーロスによる発電効率の低下という課題に対し、CO2を90%回収しながらも、現状の微粉炭火力と同等レベルである送電端効率40%の達成を目指します。

また、第1段階の酸素吹IGCCの実証については、大崎クールジェン株式会社が実施主体となって、中国電力株式会社の大崎発電所構内に実証試験設備を建設し、2015年度から試運転を開始しました。2017年3月には実証運転が開始される予定で、第1段階終了後の2020年頃には、送電端効率46%~50%(現状40%程度)、CO2排出原単位※8650g-CO2/kWh程度(現状より20%程度削減)の達成を可能とします。

今後、第3段階(2018~2021年度)として、CO2分離・回収型IGCC設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型IGFCの実証事業を計画しているとのことです(図4)。

石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金のスケジュール

図4 実証事業における今後のスケジュール 出典:資源エネルギー庁

実証事業の最終目標、IGFCとは

約10年間にも及ぶ「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業費補助金」で実現を目指す「IGFC」は、石炭火力発電としては最高峰の効率を誇る技術となります。IGFCでは、石炭をガス化し、燃料電池、ガスタービン、蒸気タービンの3種の発電形態を組み合わせてトリプル複合発電を行います(図5)。高い効率の他、幅広い出力幅に対しても高効率化が維持できることが特徴です。

IGFCの概要

図5 IGFCの概要 出典:次世代火力発電協議会

今回の実証事業で利用された酸素吹IGCCは、IGFCの基幹技術として位置付けられます。今後の目標としては、2025年度を目処に、大型IGFCの技術を確立し、送電端効率55%、CO2排出原単位590g-CO2/kWh程度(現状より30%程度削減)の達成を目指しています(図6)。

次世代火力発電技術の高効率化について

図6 次世代火力発電技術の見通し 出典:次世代火力発電協議会

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