地熱発電・開発における市場規模推移と今後の展望

2016年03月11日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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FIT対象の1つである地熱発電が、近年注目を集める発電方法になりつつあります。このコラムでは、数回にわけて、地熱発電の市場規模と魅力/立ちはだかる問題/今後の可能性について記載することで、地熱発電への理解促進を少しでも進めたいと思います。(一般社団法人エネルギー情報センター 新電力ネット運営事務局)

地熱発電の市場規模

固定価格買取制度(FIT)以降、再生可能エネルギーへの注目は、日に日に増しています。しかし、地熱発電に関しては、太陽光発電・風力発電・バイオマス発電・小水力発電に比べると注目の割になかなか普及していないという現状があります。今回のコラムでは、地熱発電の市場規模について概観を見ていきたいと思います。

日本の市場規模は約580億円、設備容量は10年で3%減少

まずは、日本での地熱発電の市場規模をご紹介いたします。

少し前のデータになりますが、2010年度の国内地熱発電市場の規模は約580億円と推計されています。内訳は地下資源調査が約10億円、地熱発電プラント建設掘削が約20億円、売電市場が約530億円となります。2008年度の610億円と比較し、市場が縮小していることが分かります(図1)。

地熱発電の国内市場規模

図1 日本国内の市場規模 出典:矢野経済研究所

市場規模だけではなく、設備容量も低迷

1966年に国内初の岩手県松川地熱発電所が運転を開始してから、これまで導入された地熱発電所の設備容量は約55万kWにとどまっています。

歴史を振り返ると、地熱発電が推進されていた時期もあり、1970年代のオイル・ショック後には地熱開発の機運が高まりました。1990年からは国の補助金政策で発電設備の導入が進みましたが、1999年の八丈島への導入を最後に設備の導入が滞る状態が続きました(図2)。

地熱発電の設備容量と発電量推移

図2 地熱発電の発電量と設備容量 出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

近年の成長率でいうと、地熱発電の国内導入量(認可出力)は、2015年度は519MWであり、2005年度の535MWと比較すると3%減少しています(図7)。これまで長年、地熱発電は停滞してきたといえます。

今後の国内における地熱市場は拡大想定、設備容量は2030年で4倍に

これまでは地熱の開発が滞っておりましたが、今後の地熱市場は、拡大傾向にあります。

矢野経済研究所によると、2011~2020年度の国内地熱発電市場規模は約8490億円に拡大すると予測されています。内訳は発電所新設市場が約870億円、地下資源調査が約250億円既設プラントの追加掘削、上記配管等敷設が約200億円、メンテナンスが230億円、売電市場が約6940億円となります。

また、日系メーカーのタービン・発電機等の輸出市場規模は約3200億円にのぼると推計されるので、国内に建設する発電所の市場8490億円と合計すると、1兆1690億円に達すると予測されています(図3)。

地熱発電の産業規模

図3 日本国内における産業別市場規模 出典:矢野経済研究所

設備容量の観点から見ると、2010年の53万kWから、2030年には4倍の約200万kW(中位想定)への成長が見込まれています(図4)。

地熱発電の導入見込み発電量

図4 今後の地熱発電における容量の想定値 出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

成長の起爆剤はFIT、政策支援や国内メーカーの技術力も後押し

まず、固定価格買取制度(FIT)の施行が地熱普及の起爆剤になっております。長期にわたって売電単価が保証されるため、事業採算性が上がり、かつ長期的な安定性が増すため資本が流入しやすくなったと考えられます。FITの施行後に開発が始められた地熱開発は多岐にわたり、特に火山の多い九州地方に集中しています。(図5)

FIT後の地熱開発状況

図5 FIT施行(H24年7月)後の地熱開発状況(平成27年2月時点) 出典:資源エネルギー庁

その他にも、①2030年度の再エネ普及目標を見据えた補助金支援、②自治体連絡会の設置、③国立・国定公園の一部開放、④世界3位のポテンシャル(図7)といった理由により、今後の地熱開発は成長が期待できます。

加えて、日本メーカーの地熱開発技術力は高く、長年国内での地熱開発は停滞していましたが、海外においては2010年時点において7割近くのシェアがあります(図6)。下記にて概略を見ていきますが、世界の市場も伸びる傾向にあり、輸出においても市場を拡大していく可能性があります。

メーカー別地熱発電システムの容量

図6 世界における地熱タービンの市場動向 出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

世界の市場規模

地熱発電の規模が大きい各国の設備容量を見ると、2005年から2015年の10年間で大きく伸びていることが分かります(図7)。近年では、アメリカ、インドネシア、ニュージーランド、アイスランド、ケニアでは、地熱開発の伸びが著しく、日本は2015年に、ケニアに抜かれて世界第9位まで後退しています。

一方、日本の地熱資源量は多く、世界最大規模の地熱地帯(ザ・ガイザーズ地熱地帯)をもつアメリカが第1位、多数の火山島があるインドネシアが第2位(2,700万kW)、次いで日本は世界第3位(2,300万kW)に位置しており、豊富な地熱資源に恵まれた日本だけに、さらなる地熱開発が期待されます。

世界における地熱発電の設備容量と市場規模の推移

図7 世界の地熱資源量と設備容量 出典:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

世界の地熱による設備容量を見ると、2015年には1,200万kWを超え、2020年には2,100万kWを超えると試算されています。第1位のアメリカが2015年350万kWから2020年560万kW、第2位のフィリピンが2015年190万kWから2020年250万kW、その他の国々も拡大が見通されております(図8)。

世界の地熱市場予測

図8 世界の地熱発電動向・予測値 出典:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

日本では、低成長時代であった地熱開発ですが、世界では、これからの発電方法と期待されています。次回は、地熱発電がもつ魅力について紹介したいと思います。

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