【固定価格買取制度】2016年度の再エネ買取価格検討を開始

2016年01月21日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

【固定価格買取制度】2016年度の再エネ買取価格検討を開始の写真

太陽光発電などの再エネ買取価格を決定する、調達価格等算定委員会が1月19日に開催されました。議論の内容から、2016年度の再エネ買い取り価格を予測していきます。

固定価格買取制度の価格検証開始

再エネ電力の買取価格を検討する「調達価格等算定員会」が、今月1月19日に始まりました。同委員会で検討する「固定価格買取制度」は、再エネの普及を円滑に進める推進剤としての役割が期待されており、その目的を達成するための買取価格形成が議論されます。

再エネの普及目標

まずは、エネルギーミックスで示された2030年の再エネ導入水準目標(22~24%)と、2015年9月末時点の再エネ導入量・認定量を元に、現在の普及状況を概観しようと思います。太陽光については、実際の導入量は2030年の目標値と比較し半分以下ですが、認定量を入れると既に超過しています。他方、太陽光以外については、風力・バイオマスを中心に少しずつ増えているものの、認定量を考慮してもエネルギーミックスで示された水準からはまだ開きがあります。このことから、太陽光発電の普及を抑えるため、太陽光発電の買取価格を引き下げる形で議論が進んでいくと考えられます。

各電源の導入量・認定量と2030年の導入見込量

出典:調達価格等算定委員会

太陽光発電の買取価格

買取価格を決定する際には、太陽光発電の普及を促進するため、設置者に利潤の発生する金額が求められます。利潤が発生しないと、誰も太陽光発電を設置しようと考えないからです。適正な利潤を求めるためには、実際の太陽光発電システム設置に必要な費用と発電量、そして収益率を算出する必要があり、下記3つの項目を考慮した値となります。

①設置費用
  1. システム費用(発電システム本体の費用)
  2. 土地造成費(設置時の土地造成費用)
  3. 接続費用(系統接続の費用)
  4. 運転維持費(稼働後の費用)
②発電量
  1. 設備利用率(電力への変換効率)
  2. 余剰売電率(実際に電力を売却できる割合)
③収益率
  1. IRR(内部収益率)

①について、太陽光発電の設置費用が高いほど、固定価格買取制度による買取費用も高額となります。設置にかかる初期費用を適正なIRRで回収できるようにするためです。この設置費用が10kW以上の場合、2015年度の29万円/kWから28万円/kWとなる見込みです。住宅用に関しても、2015年度の36.4万円/kWから35.3万円/kWと引き下げられる可能性があります。そのため、商業用と住宅用ともに買取価格引き下げの要因となります。

②の発電量については、数値が高いほど大量の電力を発電できるという指標になり、例えばパネルの電力変換効率が高くなるほど買取価格も引き下げられます。効率が上がり大量の電力を販売可能となれば、買取価格が高いと利潤が生まれ過ぎてしまうからです。10kW以上のシステムである場合、2015年度の14%から据え置きとなる可能性が高く、買取価格には影響しないと考えられます。一方、住宅用は発電効率が向上し、2015年度の12%から、14%へと2%ほど引き上げられる見込みです。加えて、余剰電力の売電率も60%から70%程度へと向上しており、住宅用に関しては、買取価格が引き下げられる要因となります。

③の収益率(IRR)については、数値が高いほど利益の得られる構造となります。このIRRに関しては、例えば10kW以上の場合2014年の6%から2015年度には5%へと引き下げられましたが、2016年度についてはこれからの議論で言及されていくと考えられます。

下記の図は、2014年度から2015年度にかけての上記項目の推移となり、これら根拠をもとに買取価格が引き下げられました。同様の形で2016年度も買取価格が形成されると考えられます。

太陽光発電の買取価格

出典:調達価格等算定委員会

今後の買取価格予測

10kW以上の太陽光発電システムに関しては、2015年度からの変動が設置費用のみであり、発電効率や収益率は据え置きの可能性が高いので、それほど買取価格が下がらないと考えられます。一方、住宅用に関しては、①設置費用の下落、②発電効率の向上、③余剰電力率の向上といった3つの理由から、大幅に買取価格が引き下げられる可能性が高いです。2015年度には出力制御の必要性によって33円と35円に分かれましたが、2016年度にはそれぞれ5円ほど下落し、30円付近となっても不思議ではありません。一方で、政府としては住宅用の太陽光発電は促進する方針なので、太陽光発電の購入意欲を損なわないレベルの引き下げになると考えられます。

太陽光を除く再生可能エネルギー(水力、風力、地熱、バイオマス)に対しては、2016年度も買取価格を据え置く方向です。理由としては、そもそもの母数が少ないためデータの検証が難しく、かつエネルギーミックスの普及目標値にもほど遠いため、買取価格を変動させるほどの要因が見当たらないからです。今後は太陽光を中心に買取価格の水準を引き下げながら、固定価格制から変動価格制へ移行していくと考えられます。政府が検討中の変動価格方式は、下記の4種類があります。

現行価格決定方式の運用厳格化(トップランナー方式)

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年12月29日

新電力ネット運営事務局

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例

持続可能な未来に向けて物流業界の脱炭素化は急務です。その中でも大手物流企業のGX事例は注目すべきアプローチを提供しています。今回は、脱炭素化の必要性と大手物流企業が果敢に進めるGX事例に焦点を当て、カーボンニュートラル実現へのヒントを紹介します。今回は中堅・中小企業のGX事例です。

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とはの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年11月02日

新電力ネット運営事務局

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とは

2023年6月にISSBはスコープ3の開示義務化を確定。これを受けて、日本や海外ではどのような対応を取っていくのか注目されています。最新の動向についてまとめました。

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年09月12日

新電力ネット運営事務局

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへ

厳しい状況が続いた電力業界ですが、2023年に入り、託送料金引き上げと規制料金改定により、大手電力7社が値上げを実施。政府は電気・ガス価格の急激な上昇を軽減するための措置を実施しています。値上げを実施する新電力企業も3割ほどあり、契約停止、撤退・倒産等もピークアウトしています。

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるかの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年08月31日

新電力ネット運営事務局

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるか

2030年度目標のCO2排出量2013年度比46%減を実現するために、地方から脱炭素化の動きを加速させています。今回は、事例を交えて脱炭素先行地域の取り組みについて紹介をします。

水素エネルギーの可能性に目を向け、各国が巨額投資!?海外の最新動向についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年07月11日

新電力ネット運営事務局

水素エネルギーの可能性に目を向け、各国が巨額投資!?海外の最新動向について

6年ぶりの改訂が注目を集めた「水素基本戦略」。同資料の中でも、各国の水素エネルギーに関する動向がまとめられていました。世界で開発競争が激化してきた水素エネルギーについて最新の海外動向をご紹介します。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス ビジネス屋と技術屋が一緒に考える脱炭素